そして黄昏の終末世界
目次
第一章 茜色の出会い
第二章 刻の黄昏
第三章 重すぎた罪
第四章 月下の誓い、慟哭に濡れて
終章 時計の針の、その行方
第一章 茜色の出会い
――五年前の暗殺の件で、大事な話がある。
オリバー・オールウィンがその件に関わったうちの一人、クリストフ・ベーラーからそんな連絡を受けたのは、三月も半ば過ぎた頃だった。
英国イギリスはロンドンで聖セントパトリックス・デーのパレードが終わった夜、ギネスを飲んでほろ酔い気分のまま家に帰ると、古びたアパートの郵便受けに、丁寧な仏語フレンチで綴られた一通の手紙が収まっていたのを発見した。
手紙などいつぞやぶりであろうと読んでみると、冒頭にそのただならぬ文が認められてあった。
五年前の暗殺。それは事件に関わった者と、その命を下した者たちだけしか知らないはずの秘密であり、永久に闇に葬られるべき事件だった。ゆえに、今更事件について話す理由など、自分にも他の連中にもない。あってはならない。口に出したくもない事柄だった。
オリバーが一考の余地もないと、手紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ入れに投げ込もうと思ったそのとき、最後に認められてあった文を見て全身から血の気が引いた。
――罪の重さに耐えられなくなった、我らが犯した罪を公表したい。
それはまるで、背後に立った仲間から銃弾を撃ち込まれたような気分だった。まさか現場では主導的立場にあったあの剣士が、こんなことを手紙に書いて寄越すとは。
確かに、あの暗殺があったせいで大きな戦争が起こり、多くの人々が死ぬことになった。クリストフが呵責の念に堪え切れなくなっても不思議ではないだろう。
だが、あの事件を公表されてしまえば待っているのは破滅の道だ。あのときのように発覚を恐れた企業にそれまでの地位を全て取り上げられ、なけなしの金銭と引き換えに退社せざるを得なくなったあのときとはわけが違う。標的を王と慕った人知の及ばぬ化け物どもから、死ぬまで命を狙われ続けることになるのだ。
ただ一人の贖罪のために、他の全てを危険に曝すことなどあってはならない。
身体を震わせるほどの焦燥に駆られたまま、オリバーは待ち合わせの場所と時刻を確認し、家に入った。酔いはもうすでに抜けていた。この日はやはり、一睡もできなかった。
そして四月の初め、旅客機や現地でチャータ