脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク
小学館eBooks〈立ち読み版〉
脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク
佐藤大とストーリーライダーズ
原作 夢野久作
イラスト わんぱく
目次
ふかふかヘッドと少女ギゴク
■ 序章序章
■ 第一章
■ 第二章
■ 第三章
■ 第四章
■ 第五章
■ 第六章
■ 第七章
■ 第八章
■ 第九章
■ 第十章
■ 第十一章
■ 第十二章
■ 第十三章
■ 第十四章
■ 第十五章
■ 第十六章
■ 第十七章
■ 第十八章
■ 第十九章
■ 第二十章
■ 第二十一章
■ 第二十二章
■ 第二十三章
■ 第二十四章
■ 第二十五章
■ 終章終章
脳Rギュル設定資料
スタッフ・リスト
サンプリング・ソース
宇宙線がフンダンに来て
イライラと俺の心を
キチガヒにしかける
レコードの割れ目を
針が辷る時
歌つてゐる奴の冷笑が見える
一九三二年
夢野久作「猟奇歌」(抄)
ふかふかヘッドと少女ギゴク
■ 序章序章
ギュルリ!
路面電車がカアブを曲がる。
石造り七層楼の百貨店が落とす影の中、トロリイ線にスパアクが散った。
車両が過ぎ去った路面の両側には、白漆喰塗りのモダンなカフェーにパアラア、ダンスホール。華やかな街の建物は着飾った人の波を吸い込んでは、夢といくばくかの金銭をヌキとって、また赤い煉瓦敷きの通りへと吐き出す。単眼の時計塔が睨めつける下で街はその営みを続け、少しずつ熱量を蓄えていた。この街が真に輝くことを許されるのは、夜だ。プカリと浮かぶ広告気球アドバルーンの狭間で白茶けて見えるネオンサインは、日没とともに絢爛たる彩りで街を覆い、カタカナ、ハングル、簡体字にピンインとあらゆる言語で人々を誘うのだ。
ひとりの娘が、そんなトウキョウを見つめていた。
そう。地上六百六十六メートルの高さから、孤区最大の繁華街を見下ろしていた。
《トウワ共栄圏ニホン圏トウキョウ孤区第二電波鉄塔》。
その場所は、そう呼ばれていた。
トウキョウ孤区、いやニホン圏で最も高い建築物である。
その最上部、耐爆性の積層ガラスに囲まれた展望室で、娘は割烹着を着て煮汁で汚れた前掛けを握りながら、眼下に広がる景色を眺めていた。
圏立劇場の大看板に描かれた男装の麗人。
その視線の先に