アウトブレイク·カンパニー 萌える侵略者16
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口絵・本文イラスト/ゆーげん
第一章 セカイがセカイが大ピンチ?
飽きるほどに見慣れた我が帝都の風景は……あちらこちらで大きく様変わりしていた。
「……ひどいものですな」
妾の隣に座っている宰相のザハールが、呟くようにそう評した。
確かにひどい。
羽車の窓から街路の様子を覗き見ると、まず目につくのが怪我人達だった。あちこちで地面に直接座り込んでいる。医術の心得のある者や、治癒の魔法の心得のある者が、忙しげに彼らの間を走り回っているのも見えた。
彼らが路上にいるのは、建物の中に──屋根の下にいる方が危険だと分かっているからだろう。喚いていたり、啜り泣いていたり、あるいはただ呆然としていたり、様子はさまざまだが、彼らの多くが初めて体験するこの災いに、相当な衝撃を受けたのは間違いあるまい。
「…………」
泣き叫ぶ幼子を抱えたまま、瓦礫に背中を預けて座っている男の姿が見えた。
年齢からして幼子の父親だろう。だがその傍らにいるべき母親の姿がない。怪我をしてどこかに運ばれていったのか、幼子と夫を置いて自分だけ逃げたのか、あるいは……彼の背後の瓦礫の下にまだ埋まったままなのか。
建物も──さすがに丸ごと倒壊したものは少ないが、一部が崩れたり、傾いたり、あるいは壁全体に亀裂が走ったりと、完全に無事である家屋はほとんど見かけない。
いや。たとえ外見が無事に見えたとしても、中は惨憺たるありさまであろう。花瓶やら絵の額やらが落ちて壊れる程度ならば、まだしも……大きく重い家具までが倒れているとなると、床そのものが傷んでいることも考えられる。貴重な品や大事な品、あるいは手当てのための道具や薬──そういったものを取りに入るのすら、ままならないと聞く。
誰も、こんなことになるとは思っていなかったのだろう。
だから備えなど、あるはずもなかった。
大地は盤石たるもの。我々はそう思って疑いもしなかった。
──『地震』。
言葉としては妾も知ってはいたが、それを自分が、そして我が帝都が体験することになるとは思ってもみなかった。少なくとも妾が──ペトラルカ・アン・エルダント三世が即位してからは、我が国で地震と呼べるようなものが発生した記録はない。ザハールが若い頃に一度経験し