丘ルトロジック 全4巻
【合本版】
丘ルトロジック
全4巻
耳目口 司
角川スニーカー文庫
目次
丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ
丘ルトロジック2 江西陀梔のアウラ
丘ルトロジック3 女郎花萩のオラトリオ
丘ルトロジック4 風景男のデカダンス
丘ルトロジック
沈丁花桜のカンタータ
耳目口 司
角川スニーカー文庫
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目次
序章 学校生活『丘研』──Baritone solo
第一部 都市伝説『飛び降り男』──Soprano solo
第二部 都市伝説『ツチノコ』──Boys chorus
第三部 都市伝説『切り裂きジャック』──Female chorus 第四部 世界征服『おお、運命の女神よ』──Mixed chorus 終章 学校生活『風景男』──Baritone solo
あとがき
『丘研』という文字を見て、俺がときめいたのは言うまでもない。
俺は風景が好きだ。大好きだ。
朝、目覚めた後にカーテンを開けて眺めるアパートの風景。朝食を食べながら見る録画した世界遺産の特集番組。たまに乗る電車の窓から見える町並み。白と黒で彩られたモノトーンのように綺麗な新校舎。看板、街頭テレビ、信号機、ポスト、空、雲、星。
そんなどこにでもありそうな日常だろうと、俺は日々ほんの少しずつでも変わる風景や、それでも本質の変わらない美しい風景を見ることが好きだった。
理屈なんて必要ない。人間が風景を愛するのは、野性的な本能である。
高校生活が始まった。
特に新生活にそれといってやりたいこともないので、とりあえず中学時代と同じ帰宅部を志した俺は、まだ見ぬ絶景スポットを求めて放課後の高校の敷地を歩いて回る。
春の夕日が眩しい。風が心地いい。
俺は両手の親指と人差し指で即興の額縁を作り、それを目の前に掲げて様々な方向から世界を覗き込む。
神楽咲高校。
近隣の高校が三校ほど合併して作られた創立して間もない公立高校で、染みも見られないほど白と黒で綺麗に塗装された、このモノトーンの建物の名称だ。
校舎内は比較的普通と言えるが、──はっきり言えば趣味が悪いとしか