EXMOD 思春期ノ能力者
小学館eBooks〈立ち読み版〉
EXMOD 思春期ノ能力者
神野オキナ
イラスト こぞう
目次
序章:Not Take the `A' Train
第一章:Thousand of Silence 第二章:25 or 6 to 7
第三章:Yesterday(is) every more 第四章:Lost Garden 第五章:Attack Waiting Hoping 第六章:You're not Vain 第七章:Break In The Wind 終章:It Never Rains In Southern Call for you あとがき
むかしむかし、あるところに、ふたりのおうじょさまのいるくにと、ひとりのおうじさまがいるくにがありました。
おうじょさまのひとりはとてもあたまがよくて、ちえのおうじょとよばれ、もうひとりはとてもゆうきがありましたから、ゆうきのおうじょとよばれました。
となりのくにのおうじさまは、とてもやさしく、きがよわく、いつもふたりのあとをついてあるいていました。
では、おはなしのはじまり、はじまり。
白い手が伸ばされる。
六月の末、昨日までの大雨がからりと晴れて、夏の始まる、駅のホームへ続く階段。
「マノ、急いで!」
白い手の主である少女が、その手に似合った清楚な声をかけた。
「わかってるよセイ姉!」
少年の手が、走りながらあたふたとネクタイを結ぶ。
「このネクタイってどうも苦手で」
「あとで私が締めてあげるからそのままで走って! あと二五秒で電車が出る」
「いやでも……」
「ふたりとも喋ってないで走れ!」
日焼けした手がそのふたりをせき立てる。
そんな会話をこだまさせて、朝の日差しの中、ふたりの少女とひとりの少年が駆け上っていく。
ローファーを履いた白くて細い脚、日焼けして、カモシカのように引き締まった赤いランニングシューズを履いた脚。先行するふたりに慌ててあたふたと追いついていこうとする、ハイカットスニーカーを履いた足。
三人の足は階段を駆け上りホームを走り、閉まろうとする寸前のドアに飛び込んだ。
「ふぅ…………」
七時一三分の電車になんとか三人は間に合った。
全体的にグリーンで統一されている電車の、唯一色違いの銀の地にグリーンのラインが入った、前か