友人キャラは大変ですか?
小学館eBooks〈立ち読み版〉
友人キャラは大変ですか?
伊達 康
イラスト 紅緒
目次
序章
第一章 友人キャラの正しいあり方
第二章 新ヒロイン登場
第三章 渡る世間はフラグばかり
第四章 真・小林一郎無双
終章
あとがき
序章
「ふう……やれやれ」
消滅していく怪物の骸を見下ろしながら、少年は大きく息をついた。
繁華街から程近い、人気のない月極駐車場。夕闇がゆっくりと侵食を広げる、俗に「逢魔が刻」と呼ばれる時間帯。
そこで少年は、今日も無事に敵を葬った。
この世界に「死と破壊」をもたらさんとする異形から、町を守ってくれた。
──俺が駆けつけたときには、もう戦闘は終わっていた。
従って、彼がどのように敵を倒したのかは分からない。手から氣の波動でも放ったのか、伝説の剣でも顕現させたのか、はたまた目からビームでも出したのか……興味は尽きないが、俺がそれを知る必要はない。
何故ならそこは、俺の踏み入るべき「領分」ではないから。
何の力も持たない一般人が、みだりに関与してはならないからだ。
(それにしても……いくら突発的に敵が現れたからって、駐車場なんかで戦ってよかったのかな? 車が三台ほど引っくり返ってるけど)
俺がそんな心配をしている間にも、異形の骸はどんどん蒸発を続けていく。
表通りでチラリと見たときは三、四メートルはあったバケモノが、今ではもう漬け物石くらいのドロドロとした固形物になっていた。
怪物というのは、どうして最後に消滅や爆発をしたがるんだろうか。一つの隠蔽工作なんだろうか。まあ人間的には、死体処理の手間が省けて助かるのだけど。
(んじゃ、そろそろ俺も仕事をするか)
やがて異形が完全に消えたのを確認すると、俺は電柱の陰から飛び出して少年へと走った。
つい今しがた来たばかりですよ? という感じをふんだんに演出し、声を裏返しつつ少年の背中に叫ぶ。
「お、おいリューガ! こんなトコにいたのかよ!」
「あ。一郎」
たちまちリューガ少年が振り向き、一瞬だけ「マズい」という表情を浮かべた。
安心しろ。俺は何も知らないし、何も見ていない。そこに異形がいたなんて、夢にも思っていない。ほんのり漂う腐臭だって気にしない。
相手が何かを言うより早く、俺は努めて取り乱した