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作者:杉井光
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2017-02-02(ASCII Media Works)
价格:¥637 原版
文库:电击文库
丛书:火目の巫女(1)
代购:lumagic.taobao.com
火目の巫女  火はすでに柱を這いのぼって天井まで届いていた。焼けた木棚が落ちてきて、かまどの脇に縮こまっていた伊月の鼻先をかすめた。 「──ぃっ」  伊月は声を立てて身体を震わせる。火の粉が肌に突き刺さり、目から鼻から獰猛な煙が入り込んでくる。喉が焼けるように痛い。土間に手をつき、吐くようなかっこうで伊月は激しくむせた。  囲炉裏の方から、みしり、と床が軋む音が聞こえた。  うずくまっていた黒い影が、のっそりと立ち上がるところだった。煙でおぼろになった輪郭は人の形をしていたが、梁に頭が触れそうなほど大きく、肌は黒い光沢のある鱗で覆われて、炎の色を映している。  影が振り向いた。  蛙か蜥蜴を思わせる大きく裂けた口から、伊月の母親の上半身がぶら下がっていた。下半身はすでに牙の奥へとすっかり吞み込まれている。衣はずたずたに引き裂かれ、胸も首筋も顔も赤黒く染まっている。 「ぅ、あぁ」  伊月の喉から再び声が絞り出された。  黒い蜥蜴は伊月をにらみながらゆっくりと口の中のものを嚙み砕いた。湿った音が、木が燃えて爆ぜる音に混じる。  やがて蜥蜴は伊月の母親を嚥下すると、目を細めて天井を仰ぎ、げぶりと息を吐いた。牙にからみついた長い黒髪が口の端から垂れ、血で鱗に張り付いていた。 「……ぁああ」  伊月はうめく。  蜥蜴人が、笑ったように思えた。 「……ぁああああアアッ」  伊月はなにかを握りしめて立ち上がった。立ったとたんによろけて転びそうになる。  伊月が握っていたのは、鉞の柄だった。柄だけで幼い伊月の背丈ほどもある。刃は幅広のくろがねで、とても小娘が持ち上げられるものではない。  蜥蜴が口を歪めてげぶ、げぶ、と喉を鳴らした。  笑っているのだ。  ──よくも、 「かかさまを……ッ」  ずるり、ずるりと長い尾を引きずりながら蜥蜴の巨軀が近づいてくる。炎を背にその全身は陰影となり、目だけが白くぎらついている。 「……来ンなッ」  どこからそんな力が出たのか伊月にもわからなかった。ただ無我夢中で腕を振り上げると、鉞が伊月の頭上にまで持ち上がった。  そのまま伊月は前のめりに倒れながら腕を振り下ろした。太い刃が空を裂く。  ぎん、と鈍い音がして、鉞の刃は鱗に弾かれた。跳ね返って土間に突き刺さると、木の柄が見る間に炎に包まれる。  蜥蜴の顔が伊