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作者:柳野かなた,輪くすさが
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-12-25(overlap)
价格:¥740 原版
文库:overlap文库
丛书:最果てのパラディン(3.5)
代购:lumagic.taobao.com
最果てのパラディンIII〈下〉 鉄錆の山の王 目次 序章 一章 二章 三章 四章 終章 番外編:月の旅路  石組みの壁。木製の小さな椅子や、ちょっとした書き物机があり、壁面を窪ませたアルコーブには寝心地の良さそうなベッドもある。  書き物机や棚には、旅に出るにあたって置いて行った生活用品や本、たくさんの覚え書きがそのまま残っていた。  懐かしい、あの丘の神殿の、僕の部屋だ。 「…………」  僕はあの、死者の街に帰ってきていた。  平和な帰郷――であれば良かったのだけれど、そうはならなかった。  増加する悪魔デーモン絡みの事件。  西の《鉄錆山脈ラストマウンテンズ》から響く竜の咆哮。  不死神の《遣いヘラルド》からは、竜に挑めば死ぬと予言されたけれど……僕は悩んだ末に、それでも破りたくない誓いのために、竜に挑むことを決めた。  もちろん、無為に死ににいくつもりはない。作戦も立てた。  川を遡上して悪魔デーモンたちの警戒網を潜り、《鉄錆山脈ラストマウンテンズ》の西側から奇襲をかける策だ。  そのために、死者の街を経由することになったが故の帰郷。  ――死戦の前の、僅かな寄り道だった。  今は皆、ガスに案内されて神殿のいくつかの部屋に分かれ、ささやかな休息をとっている。  僕の割り当てはこの、少年時代を過ごした懐かしい部屋だ。  冷たい石壁を指でなぞる。いくつもの思い出が蘇る。  ……不死者アンデツドの三人は寒暖差があまり分からなかったけれど、僕は生身だから、冷え込む冬の夜はずいぶん寒かった。  そういう時、ガスは何だかんだと言いながら温石をこしらえてくれた。  炉端で石が温まるのを待ちながら、ブラッドは大げさな身振り手振りで勇壮な武勇伝を語ってくれて。  マリーは縫い物をしながら、ブラッドの語りに微笑んで相槌を打っていた。  それはもう過ぎ去ってしまった、きらきらと輝く幸せな過去だった。  ……ブラッドとマリーは、もういない。  けれど、それはきっと、あの日々の価値を損なうものではない。  幸せな過去は、きらきらと輝き続ける。  多分ガスが消えて、そしていつか、僕が死んでしまったって。  流れる時の川の底に降り積もる、うつくしい砂のように。  ――ずっと、きらきらと輝き続けるのだ。 「……ん」  そんな風に想像すると、口の端から笑みがこぼれた。