フレイム王国興亡記 6
目次
序章
第一章
第二章
幕間
第三章
第四章
幕間
第五章
終章
番外編 彼女が聖女になったワケ
執務机が一つに、中央に小ぶりの円卓と椅子が二脚。申し訳程度に一輪挿しの花瓶と、絵画。それがフレイム王国宰相執務室にあるものの全てである。オルケナ大陸随一の名門王国であるフレイム王国の宰相執務室としては、その伝統と格式に鑑みれば随分『地味』と言えるであろう。
現在、この部屋の主であるロッテ・バウムガルデンはこの質素な調度品のみで構成された部屋が好きである。どちらかと言えば現実主義者である彼にとって、調度品の多さは煩わしさを感じこそすれ、精神の癒しにはなりはしない。綺麗な絵画も、綺麗な花も彼には必要無いのだ。教養程度にそれらを学んだ以上の愛着は無い。
「失礼します、閣下」
執務机に腰掛け書類に目を通していたロッテに、扉の向こうから声がかかる。落としていた書類から眼を上げると、ロッテは扉越しに声をかけた。
「なんだ?」
「お申し付け通り、お連れ致しました」
その声に、もうそんな時間かと思いロッテは執務机から立ちあがり扉を開ける。眼前には見慣れた王城付メイド、フローラが頭を下げている姿が目に入り、その後ろには。
「……御無沙汰しております」
「お久しぶりですな」
ロッテの決して大きくは無い眼が、さらに細まる。見ようによってはお爺ちゃんが孫を見る様な、そんな視線。
「まあ、扉口で話す事もありますまい。こんな所ではなんですので……紅茶を頼む」
一礼して下がるメイドにそう言付け、ロッテは客人を部屋に招き入れた。遠慮がちに、それでも物珍しそうに部屋の中を見回した客人は――その表情を訝しげなものに変化させる。
「どうされましたか?」
「失礼。その……思ったより、物が少ないので」
「執務室ですからな。華美な装飾は不要、必要なモノだけあれば良いのです」
「……なるほど」
一つ、軽く微笑みロッテは円卓の椅子を指す。
「さあ、どうぞお掛け下さい」
松代殿、と。
笑みを浮かべたロッテに、浩太は一つ頷き腰を下ろした。
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「申し訳ございませんでしたな。急にお呼びだてして」
向かい合わせに座る二人の間、置かれたテーブルの上では紅茶が湯気を立てていた。
「いえ。私も一度、御挨拶をしなければいけないと思っ