マキゾエホリック 全3巻
【合本版】
マキゾエホリック
全3巻
東 亮太
角川スニーカー文庫
目次
マキゾエホリック Case1:転校生という名の記号
マキゾエホリック Case2:大邪神という名の記号
マキゾエホリック Case3:魔法少女という名の記号
特別付録 マキゾエホリック Case0:ポニーテールという名の記号
マキゾエホリック
Case1:転校生という名の記号
東 亮太
角川スニーカー文庫
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信したり、ホームページ上に転載したりすることを禁止します。また、
本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
目次
序章 まず、灘英斗という記号について。
1 九月一日朝 私、転校早々在籍データを失う。
2 九月一日午前 私、記憶喪失者から困った事実を聞かされる。
3 九月二日午前 私、敵軍勢との交渉を傍観する。
4 九月三日正午過ぎ 私、爆発して落下する。
5 九月三日午後 私、黒幕に挑戦する。
6 九月四日放課後 私、真犯人との対決に巻き込まれる。
終章 いま一度、私という記号について。
私立御伽学園1年乙組クラス名簿
あとがき
解説
序章 まず、灘英斗という記号について。
灘英斗にとって、桜とは忌むべき存在なのだという。
だいたい暖かくなってくると一斉に咲き始めて、校庭を桃色に縁取ってくれる。とても華やかでいいじゃないかなどと私は思うのだが、彼に言わせれば所詮戦時教育の産物であり、別段ありがたがるほどのものでもない、とのことなのだ。
しかしこれは彼が反戦主義者だとか左翼的だとかいうわけではない。単に汚らしいから嫌なのだそうである。
それを聞いた時は、やはりこの男は心底から変人だと思った。だがどうもよくよく聞いてみると、上ではなく下のことを言っていたらしい。下というのはつまり地面で、要するに地面が汚れるから嫌だと言いたかったのである。
なるほど、確かに散った後の花弁というのは踏まれたり雨ざらしになったりで、やがて片隅に溜まって茶色く変色する。几帳面な性格の彼にとっては、そういうところが気に入らない原因なのだろう。
ただ──私が思うに、彼は春そのものが嫌いなのではなかろうか。春といえば新年度の始まり。進学やらクラス替えやら何かと行事は尽