いつかの空、君との魔法II
いつかの空、君との魔法Ⅱ
藤宮カズキ
角川スニーカー文庫
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本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
目次
序章
第1章
第2章
第3章
第4章
終章
あとがき
「恋煩い?」
唐突な言葉に、レイシャの肩と心臓が大きく跳ね上がった。取り落としたフォークが手つかずのチーズケーキの横でカチャリと跳ねる。
「な、なに。いきなり……」
たった一言の問いかけに、なぜだか追い詰められた気分になりながら、レイシャはこちらを覗き込んでくる三人の友人たちを見た。
「だってねぇ」
と、意味ありげな目配せを他の二人に送っているのは、問いかけを寄越したミヤビ・シンドラーだ。頭の高い位置でふたつに結った髪が楽しげに揺れ、瞳を好奇心に輝かせている。ミーハーで落ち着きのない彼女の内心を表すように、手にしたパフェ用の長いスプーンを楽しげに揺らしている。
「自覚がないところがまた何とも」
含みを持たせた笑みで、東さゆりはそんなミヤビの視線を受け流してしまう。さっぱりとしたショートカットの下で目を伏せているのを見ると、下級生の女子に人気が出るのもわかろうというものだ。さゆりのマイペースにはいつだって育ちの良さが滲み、今だって喧騒のある喫茶店の中、彼女ひとりだけ品のある仕草で行儀よく紅茶をすすっていた。
「あはは……」
そして困ったような笑みを浮かべているのが朝日奈葵だ。真面目な彼女がそうして誤魔化しているということは、ミヤビの問いかけが今のレイシャを的確に射貫くものであったということでもある。束感の強いもっさりとした髪をひとつに結った葵は、申し訳なさそうな上目遣いでホットカフェオレを口に含んでいた。
「なんだろうねーレイシャは。ここ最近、特に物思いに耽ってるの多くない?」
「そ、そんなことないって」
「今日の授業中、先生に指名されても上の空だったね」
「あ、あれは……っ」
「帰り、階段を踏み外しそうになってたよね。大丈夫だった?」
「大丈夫。大丈夫だから。ケガとかしてないし。本当に大丈夫だから」
そうしてレイシャが言葉を返すたびに、友人たちはそれぞれの視線にある種の熱を込めてこちらを見つめ返してくる。そん