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作者:岩田洋季,白もち桜
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2017-01-06(ASCII Media Works)
价格:¥590 原版
文库:电击文库

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手のひらの恋と世界の王の娘たち        初登校と乙女の秘密 美哉 9月2日(火)  八重ノ学園で迎えたはじめての朝。アジア寮から学園の中心部へとつながる遊歩道には、湖畔の静謐さと初登校する外部生のにぎやかさが共存している。  その道を歩きながら──。 「おはようございます。内親王!」 「天利さん、ご機嫌よう!」 「うん。おはよう。いい朝だな」  挨拶してくる第二世界出身の生徒にそう対応していた羊子が、周囲の人気がなくなったときにふと、気になっていた口振りで言ってきた。 「美哉? その、……わたしの勘ちがいなら、ごめん。起きてからずっと、元気がないような……。体調がよくない? も、もも、もしかして、ご機嫌斜めなのか?」 「……。いや、そんなことない。だいじょうぶ」 「で、でも、朝もなかなか和室から出てこなかったし、やっと起きてきたと思ったら赤子を睨み殺しそうな顔をしていたし──」 「中等学校時代にお世話になっていた師匠にも、おまえは表情に愛想が足らない、ってよく文句言われてたよ。……気遣わせて、わるい。昨日あんまり眠れなかっただけだ」  美哉はそう答えた。  羊子は安堵と心配の入り交じった面持ちになる。 「そっか。……えっと、美哉が真面目なのはわかっているつもりだけど、無理はしないでほしい。わたしのために健康が損なわれたら、美哉のご家族にも申し訳が立たない。ほかの世界なんて慣れない環境で、眠れないのもわかる」  美哉はおだやかに語る第二世界の〝世界の王の娘〟を見やって、考える。……自分が眠れなかったのは環境の変化、べつの並行世界上に創られた、八つの世界が重なる約束の地にやってきた昂揚感や責任感からじゃない、と。 〝剣御子〟のふたつ名で知られる羊子は、そもそも第二世界の超有名人だ。  帝太子の正室の子、という血統に加え、第二世界特有の戦闘技術の基礎となる〈自己練成〉の圧倒的な才能。第二世界を代表する〝王の娘〟として八重ノ学園に入学することが十年前には決定しており、英才教育がほどこされ、今年十六になったばかりながら剣を持てば戦の女神だと称される。おまけにこの可憐な容姿なのだ。  高嶺の花という形容すら不遜な、世界のプリンセスとして憧れの的であり続けた。  美哉はその羊子と昨晩、おなじ部屋ですごしたわけである。  百合の花を連想させる羊子の香りは、いつまでも満