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作者:中村恵里加
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2017-01-19(ASCII Media Works)
价格:¥637 原版
文库:电击文库

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ひがえりグラディエーター  誕生日というのは、基本的にはおめでたい日である。あと六十回くらい誕生日を迎えたらさすがにおめでたいという気分は抜けるかもしれない。しかし今年の冬に十六回目の誕生日を迎える天海蔵人にとっては、まだ誕生日というのは『おめでたい日』という認識が抜けてはいない。  明日は誕生日だ。といっても蔵人自身のではない。彼の妹が、明日で十四歳を迎える。一応プレゼントめいたものを用意する予定はあるが、何を買えばいいのか。毎年悩んだ末に、結局可愛さの欠片もない適当な何かを見繕って妹の机に置いているが、今年もそうなってしまう予感が少なからずある。  それとも、今回は何か変化が訪れるのだろうか。そんなことを考えながらだらだらと教科書やノートを鞄に詰めていると、少し離れたところで何やら相談していた級友の一人が声をかけてきた。 「天海ー、明日辺りカラオケ行くけど、お前も来いよ」 「そうそう、たまにはお前の無駄に暑苦しいへったくそな歌聴かせてくれ」  周囲にいた女子生徒が数人吹き出したが、蔵人は特に気を悪くはしなかった。確かに歌に関しては、正直自分でも下手な部類だと認識している。音程はしっかりとっているつもりなのだが、他人が聴くと半音どころか明後日の方角にまでずれているらしい。  本来なら耳障りなのだろうが、蔵人のはっきりとした発音と勢いだけはある声量のせいで、『下手だが聴いていて面白い』という物好きなファンが数人存在していた。  始業式の校歌斉唱の時など他の生徒があまり声を出さない中、蔵人だけがやたらと大きな声で下手くそに歌い上げるために、周囲から失笑が洩れることは小中学校においては風物詩に近いものであった。  合唱コンクールの時期になると、「優勝なんて無理だから、天海に好きに歌わせてウケを取ろう」「最初から諦めてどうする、天海には指揮者の練習させて歌わせるな」という意見が、蔵人の目の前で拮抗していたのを思い出す。 『周りのお友達がお人よしばかりでよかったね。そうじゃなかったら、今頃いじめられてたかも。お前の歌が下手くそなのがいけないんだーって!』  そう言った時の妹は、確か小学二年生だった。 「俺の素晴らしい美声を聴かせてやりたいんだけど、明日は用があるんだ。また今度誘ってくれよ」 「何だよ、カラオケ以上に大事な用なんて、そうそうあるもんじゃねえぞ」  既に鞄を担い