グレイトフル·バッド 闇に堕ちた英雄
目次
序章
1章 暗黒の都市
2章 未来の仇敵
3章 百年の悪夢
4章 その男は悪へと向かう
5章 闇から来るもの
6章 光なき英雄たち
終章
あとがき
グレイトフル・バッド
闇に堕ちた英雄
鏡 遊
角川スニーカー文庫
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陽の光も届かない、はるかなる地下にその部屋はあった。
数十人の人間が充分に入れるほどに広く、壁も床も石造りで、その石そのものが淡く発光し、あたりを照らしている。
部屋の奥に、一段高くなっている祭壇のような場所があった。
そこに、一人の少年が横たわっている。年齢は十代なかばほど。
若いのだが、黒髪に白いものが混じっている。
不意に──少年は目を開けた。それから、ゆっくりと立ち上がり、あたりを見回す。
少年は、ややぎこちない動きで祭壇から下りて歩き始めた。
部屋の奥に階段を見つけ、一段ずつ慎重に歩を進めていく。
長い長い階段を昇りきると、その先は一切の光が差さない暗闇だった。
少年は壁に手をつき、さらに前へと歩いて行く。何度もつまずき、時間の感覚もわからなくなるほど歩くと、行く先に小さな光が見えた。
古い木造の扉だった。わずかな隙間から光が差し込んでいる。歪んで開きづらくなっている扉を、少年は体当たりするようにして開いた。
「…………っ!」
少年は、まばゆい光に顔をしかめた。扉の向こうは屋外で──見渡す限りの荒野が広がっている。
乾いた大地と、まばらに点在している草木。それだけだった。
少年は背後を振り向いた。
そこには──朽ちかけた、漆黒の石で築かれた巨大な城が建っている。
少年は不意に気づいた。そして、思い出した。
世界制覇を目指した、邪悪なる者──魔王と呼ばれた男が築いた城であることを。
少年は、魔王に挑んだ六人の戦士の一人であったことを。
「魔王を殺したんだっけ……」
少年は、小さくつぶやく。
そうだ、それは間違いない。
古の神々によって鍛え上げられた宝剣を振るって魔王と戦い、最後にその心臓を貫いたときの手応えを覚えている。
そして──
「あれ? 俺も