奴隷姫と過ごす日々 ~蒼の姫と召喚英雄~
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口絵・本文イラスト/あずーる
デザイン/AFTER GLOW
序「九頭竜雪彦の幸せな日常」
九頭竜雪彦は超一級の召喚英雄である。
彼が生まれて初めて異世界に召喚されたのは十三歳のときだった。中学校の帰りに異世界へと召拉喚致された彼は、そこで英雄としての才能を開花。一年ほどの時間をその世界で過ごし、ついに初めての「救国」を成し遂げた。
「異世界召喚」の縁は数え切れないほど彼に降り掛かった。
どうして彼がそこまで異世界に召喚されてしまうのかは不明だったが、とにかくそれからは異世界にいる時間と地球にいる時間が逆転するほど雪彦は異世界に召喚されまくり、そして世界を救いまくった。
最初は一つの世界を救うのに一年掛かったが、今となっては短くて一ヵ月、少なくとも三ヵ月あれば大抵の問題は解決出来るようになった。
全てを、自分一人だけで。
最初の頃は冒険に「仲間」を伴っていたが、それもすぐに要らなくなった。雪彦はあまりに強すぎるため、下手にパーティを組むことは冒険の効率を低下させるだけだからだ。
もう十年以上、単独行動ソロプレイでしか冒険を行っていない。
それどころか、召喚された世界で会話をした人物が雪彦を喚び出した召喚士と、それを命令した王様だけ──というケースも珍しくなくなってしまった。
異世界で全く出会いがなくなったのだ。
だから、最近は異世界に留まるよう引き止められることも全くなくなった。
世界に平和が戻れば召喚英雄は元の世界に帰還するものだが、ファンタジー小説の世界の英雄はそのまま召喚された世界に定住したり、異世界の「嫁」を母国へとお持ち帰りするケースも多々ある。
というか、大半がそのどちらかだ。
だって──そうしなければハッピーエンドにならないではないか!
奇妙な話だが、魔王を倒し、お姫さまを救い出して世界を救っただけでは「めでたしめでたし」とはならない。二度と元の世界に帰ることも出来ないのならば、真っ当な勇者は、故郷を捨てるべきなのだ。
その世界で築き上げた「絆」を重視しなければならない。
そうでなくては英雄は名乗れない。
──だが、絆など芽生える暇もなくちょちょいと世界を救ってしまう九頭竜雪彦は、それでもやはり最上級の召喚