英雄取締部隊
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イラスト/一色
デザイン/ムシカゴグラフィクス
序章 英雄を取り締まる者達
静けさに包まれた夜道を、ローブをまとった男が歩いていた。
そこはライヴァース王国の王都内。メインストリートから少し離れた居住区。ぽつぽつと並ぶ街灯ランプが、石畳の路地をぼんやりと照らしている。
人通りは皆無。何せ民家に暮らす人々は深い夢の中だ。暗闇に紛れるように、コツコツと足音を鳴らす男の存在など気にも留めないだろう。
「…………」
その男の表情には警戒心が見て取れた。常に周囲へ気を配りながら歩を進めている。
不意に生き物の気配を察知し、男は焦ったように背後を振り返る。しかしそこには民家の馬小屋から顔を覗かせていた馬が、不思議そうに男を見ているだけだった。
男はほっと胸を撫で下ろし、再び歩き始めるのだった。
「わかってるよね、クロウ? 不用意な行動は厳禁だよ」
「大丈夫だって。リゼリアはホントにそればっかだな」
そんな挙動不審な男を、路地の物陰から観察する少女と青年がいた。
二人は男に悟られないように気配を消しながら、次の行動を話し合っている。
「むっ。そればっかり言われるようなことをしてるからでしょ!」
と、少女の方──リゼリア・ハーシェルがちょっとだけ声を荒らげた。
今時のオシャレな剣士服を着た、可愛らしい少女だ。
外見は十代後半。ハーフアップにしたロングの金髪に綺麗な碧眼。背丈は女の子の平均ほどだが、胸の膨らみは服の上からでも豊満だとわかるほどにスタイルがよかった。
「そんなことしてたか?」
「してたよっ。いっぱいしてた!」
「心当たりがないな」
憤慨するリゼリアに対してパートナーの青年──クロウ・シュバイツァーは「はて?」と首を傾げた。
どことなくぼんやりした雰囲気の黒髪の青年だ。
年の頃は二十歳前後で、身長はやや高め。パッと見だと細身の印象を受けるが、日頃の鍛練のおかげか筋肉の付き方がよく、かなり鍛え上げられていることがわかる。
「この前なんかいきなり取締対象に殴りかかってたでしょ!」
「それは『迅速に身柄を確保しろ』って事前に言われてたからだよ」
「出会い頭に襲いかかるのは確保じゃなくて強襲って言うんです!」
「まあまあ。それ