遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG
この本は縦書きでレイアウトされています。
CONTENTS
第一章 「アーシュゲイン」から始まるRPG
第二章 強き心は、時を越えず
第三章 ゲームでしか救えない世界がある
終 章 エンディングでも泣くんじゃない
ダッシュエックス文庫DIGITAL
遊者戦記
#君とリアルを取り戻すRPG
紙城境介
始めに言おう。これはゲームであって遊びである。
俺たちが楽しく遊ぶだけの物語。ただそれだけの伝説。ただそれだけの戦記。
記憶とタイムラインにだけ刻まれる、人類史上最大の実況プレイ。
だから問おう。楽しむ準備はできているか?
できているなら始めよう。正義も悪も存在しない、ただ面白いだけのゲームを。
さあ――一緒に遊ぼうぜ。
第一章 「アーシュゲイン」から始まるRPG
俺はエレベーターで四階まで上がり、ホビーショップ《ブルーシップ》に入った。手前には無数のカードが並んだショーケースがあり、奥の棚にはボードゲームの箱が並んでいる。
呼び出し場所は対戦スペースだった。決して広くはないスペースは半分以上が空いていて、にもかかわらず、ある一角だけ人口密度が妙に高い。
その人垣の中心に、あいつがいた。
「――あ、すみません。引きました」
「「「つえええええええええええええええ――――っ!!」」」
休日の中高生や大学生、職業がよくわからんおっさんなどが、揃って歓声を上げる。
その真ん中でカードを繰っているのは、恐ろしいことに一人の女子中学生だ。しかも顔は人形みたいに整っていて、服装は今風に垢抜けていて、極めつけに地毛の黒髪がさらりと長く伸びている。ファッション雑誌の表紙か、またはアニメのパッケージにでも映っていそうな姿が、男どもに混じってTCGトレーデイングカードゲームに興じているのだった。何のイベントだよ。
「いやー、サクラちゃん相変わらず強いわー!」
「いえいえ。そちらのミスのおかげです」
「ほんとそれ。お前プレミひどすぎ」「これだからコピーデッカーは!」「うるせえなあ! お前らが横からぎゃあぎゃあ口挟んでくるからだろうが!」
……入りにくい……。もう帰ろうかな。
集団を遠巻きに見ていると、カードを片付け終えた女子中学生――サクラと目があった。
「あ。リオ先輩っ! もう、遅いですよ~!」
瞬間、表