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作者:
入間人間
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-12-09(ASCII Media Works)
价格:¥550
原版
文库:电击文库
丛书:
安達としまむら
(7)
代购:
lumagic.taobao.com
B01N2OLCZA
安達としまむら7
入間人間
安達としまむら
7
电击文库
¥550
¥594
ASCII Media Works
2016-12-09
日文
5
书籍样本, ライトノベル, Kindle本
7
安達としまむら7
ぱちぱちぱちと、拍手もしていないのに頰を打つような音が聞こえる。カーテンを開けていない窓の向こうに、早くも光が見える。目覚めはまるで夜と朝が地続きであるように、時間の経過を感じさせない。そして、肩や頭の重さの一切も感じなかった。 普段から寝起きは悪い方ではない。でもこの澄んだ感覚は、なんだろう。 カーテンを開く。 「………………………………………」 息を吞み、言葉を失う。 昇りつつある日が、屋根を、木々を、朝という時間を照らす。 光に満ちた景色の輪郭は、なにもかもが柔らかく、丸く映る。 こんなに光が強く、暖かく見えるのは、初めてだった。 心のありようで世界は変わる。いや、世界っていうのは自分の心そのものなのだ。 ……みたいなことが、前に読んだ本に書いてあった気がした。 今はそれが、なんとなく分かる。 ベッドから下りても足回りがふわふわする。今なら跳ねるように飛べる気がして、その一方で歩いているように思えないほど不安定だった。床に敷いた絨毯を踏む感触が曖昧だ。 そのまま部屋の中を歩き回る。ぼんやりとなって、目的を見つけられない。なにから始めればいいのか摑めず、意識が散漫になっていた。片付かない部屋の掃除にでも振り回されるような心境で、しばらくさまよう。気を抜くと目の前が真っ白になりそうだった。 やがて部屋の中央で正座しながら、辞書を覗き込む。 「こ、こ、こ」 鶏の鳴き声みたいだった。 交際。人間同士がつきあうこと。ぺらぺらぺら。 つきあう。恋人として交際する。ぺらぺらぺら! 恋人。恋しく思う相手。普通、相思相愛の間柄にいう。 ばたん。 辞書を閉じたついでに私も倒れた。息を止めているように苦しくなる。 胸の下、鳩尾のあたりがきゅうっと引き締まる。酸欠みたいに手足が重くなって、息を吸わないといけない、そんな風に意識して口を開く。そうして吸い込んだ空気が塊のように喉を圧迫する。喉が詰まり、余計に息苦しくなってしまい、俯せになって噎せた。 一通り苦しんでから、胸を押さえて仰向けになる。夏の気温が覆い被さるように、次第次第に肌が火照る。取り分け、血でも滲むようにじわぁと、首筋が熱くなる。それが次第に鼓動を速めて、吐き気と頭痛を催す。しかしそこに溜まる嫌みなものは少なく、どこか爽やかですらあった