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作者:川口士
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2017-01-25(Media Factory)
价格:¥580 原版
文库:MF文库J
丛书:魔弾の王と戦姫(16)
代购:lumagic.taobao.com
魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉16 魔弾の王と戦姫ヴアナデイース16 川口 士 本作品の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信したり、ホームページ上に転載したりすることを禁止します。また、 本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。  目次 1.混迷の都 2.手をとりあって 3.予兆 4.噴きあがる炎 1   混迷の都  厚みのある黒灰色の雲がいくつも重なって、王都シレジアの空を覆っている。  まだ昼を過ぎたばかりだというのに地上は薄暗く、通りを行く人々は顔を曇らせ、急ぎ足になっていた。冷たい秋の風に、赤らんだ鼻をすする者もいる。露店を出している商人たちは、一雨くる前にと商品をかたづけはじめていた。 「いつ降りだしてもおかしくないな」  空を見上げて、ティグルヴルムド=ヴォルンは物憂げな表情をつくった。  若者は旅装に身を包み、左手に家宝の黒弓を持って、腰に矢筒を提げている。旅装なのは、町中で弓を持っていてもなるべく怪しまれないようにという、彼なりの考えだ。  王都が平和であれば、若者とてわざわざ弓矢を持ち歩こうとは思わない。  だが、現在の王都が見かけほどには平穏でないことを、彼は知っている。自分や仲間を守るためにも、弓を手放すことはできなかった。 「ティグル。今日はもう引きあげましょうか」  若者を愛称で呼んで、そう提案したのはリュドミラ=ルリエだ。ティグルと同じ十八歳で、親しい者からはミラという愛称で呼ばれている。  ミラのそばに立っている、三つ年下のオルガ=タムも、薄紅色の髪の先端を指でいじりながら口を開いた。 「わたしも、そうした方がいいと思う。風が湿っぽい」  ミラとオルガはそれぞれ地味な色合いの外套をまとい、帽子を目深にかぶっている。正体を隠すための変装だった。王国の重鎮である戦姫が市街を歩きまわっているなどと知られたら、ちょっとした騒ぎになってしまう。  人々が慌ただしく歩き去っていく通りを見つめて、ティグルは残念そうにつぶやいた。 「今日は、あまりはかどらなかったな」 「こんな日もあるわよ。ソフィーの屋敷に戻ったら、紅茶チヤイを淹れてあげるわ」  ミラが苦笑を浮かべてなぐさめる。若者は気を取り直して、彼女に礼を言った。  ティグルたちは朝から王都を歩きまわって、情報収集に努めていた。  下級貴族や騎士がよく使っ