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作者:佐島勤,キヌガサ雄一
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2017-01-06(ASCII Media Works)
价格:¥650 原版
文库:电击文库

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魔人執行官 インスタント·ウィッチ  [1]  桜の花もすっかり散って、日が沈み暗闇が勢力を広げても寒さに震えることは無くなった。  夜の散歩と洒落込むには心地の良い季節だが、淡い花びらが瑞々しい緑に主役の座を譲ったこの時期は夜桜見物に訪れる人々も無く、夜の公園は閑散としている。  今夜は特に、人気が無い。  こんな御時世だ。昼間は憩いを求める大勢の市民で賑わう人気スポットも、夜になれば人通りは閑散としたものになる。それでも今夜は、人の行き来が少なすぎる。  所々疎らな街灯に照らされているが、暗闇を押し返すには至らない。  夜の闇に沈んだ公園。  今、そこには二つの人影しか無かった。  一人は、ヒールを鳴らして走っている二十代半ばの若い女性。細身のジャケットにタイトスカートの装いは、会社員だろうか。スカートの丈が少々短すぎるようにも見えるが、若い女性のファッションとしては許容範囲と言えるだろう。  およそ激しい運動をするような服装ではないにも拘わらず、彼女は懸命に走っていた。  逃げていた。  無言で追いかけてくる、大柄な男から。  彼女を脅かしている男は、客観的に見れば、特別背が高いというわけではない。大体百八十センチ前後か。今時では珍しくない身長だ。  だが単なる数字を超えて、その男の肉体には威圧感があった。  太い腕、太い足、分厚い胸板。  ただ肉がついているだけではない。  引き締まった腰、逞しい肩、そして見るからに強靱な首。  男の身体からは、暴力の臭いが隠しようもなく滲み出している。  そして、到底堅気とは思えない格好をしていた。  銀ラメ入りの黒のスーツ。その下からのぞくダークレッドのクルーネックシャツ。  足元はウイングチップのメンズブーツ。  深紅の中折れ帽を被り、赤い手袋をはめている。  安いホストのようなコーディネートだが、男の雰囲気が軽薄に見せない。むしろ彼が持つ暴力的な印象を増幅していた。  男は走っていない。大股で足早に歩いているだけだ。  それだけでその男は、ヒールを鳴らし懸命に逃げる女性を追い詰めていた。  遂に力尽きたのか、女の足が止まる。彼女は息を荒げ、一際太い木の幹にもたれ掛かるようにして、追いかけてきた男と向かい合った。  男もまた立ち止まり、中折れ帽の下から女を見下ろした。 「何? 貴方、一体何なの? あた