后退 返回首页
作者:五月猫文,はあと
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-12-02(讲谈社)
价格:¥454 原版
文库:讲谈社轻小说文库

代购:lumagic.taobao.com
かくて飛竜は涙を流す The Dragons’ Tear ご利用になるブラウザまたはビューワにより、表示が異なることがあります。 序章 『赤の四号、目標の地点に到達』  僕の飛行帽に取り付けられたヘッドフォンが、男の冷たい声を伝える。  激しいプロペラの音が、レシプロエンジンの音が、清らかなこの空に、醜いさざなみを立てていた。 『これより爆撃を開始する。銃手は索敵を続けろ』 「了解」  僕はそう答えた。  自分が座る機関銃の取り付けられた座席、そこには視界を確保するために半球状の形をした広い窓が用意してあって、眼前には雲の多い灰色の空と、そして、どす黒い煙を上げる街の姿が映しだされていた。  僕たちは、爆撃機に乗っている。  そして今、敵の国の飛行機工場を焼きつくすのだということで、せっせと空を飛んでいるというわけだった。  既に、爆撃は始まっている。  順調に街で炸裂する爆弾の様子を見下ろしていると、曇った空の下、地平線のあたりに蠢くものを確認する。 「四時方向に機影」 『撃墜しろ』 「はい」  それは、眼下の街を守ろうとして飛び立った、連邦国の戦闘機だった。  僕たち、帝国の機体と違って滑らかで美しいそのフォルムが、陽光をきらめかせながらこちらへと向かってくる。  それはさながら、物語に出てくる騎士のように勇ましい姿だ。  とすれば、僕たちの操るこの爆撃機は、街を破壊せんと現れた邪な竜なんだろうか。  ぼんやりそう思いながら、スコープを覗き、レティクルを合わせる。  ただ、騎士たちは明らかに熟練度が足りない。愚かにも、騎士道のごとくまっすぐにこちらへ飛んでくる。落としてくれと言わんばかりの機動だ。  いや、そもそも、経験を積んだパイロットなんてもういないのかもしれない。  長びく戦争が、パイロットたちを殺しすぎた。兵士の質を低下させていた。かれらもきっと、僕と同じように若くして飛行機に乗せられて、慣れない操縦に振り回されながら死に物狂いでこの街を守っているのだろう。  けれど、僕はためらわずに機関銃のスイッチを押した。オレンジ色の曳光弾が青い空に刻まれ、敵機へと吸い込まれるように飛んで行く。するとかれらはいずれも煙を吹いて、そのまま護るべき街へと墜落していった。  何も感じなかった。 「二機撃墜」  僕はそう報告する。 『了解』  今度は、視界の端でまた赤い光を