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作者:渡瀬草一郎
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-12-09(ASCII Media Works)
价格:¥650 原版
文库:电击文库

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ソードアート·オンライン オルタナティブ クローバーズ·リグレット  祭り囃子が遠くに聞こえる。  笛が甲高く、鼓が軽妙に、琴が雅やかに、音をつなげて浮かれ騒いでいる。  間近で聞けば賑やかなはずの喧噪も、離れてしまうと何処か寂しい。  その音が何処から聞こえてくるのか、誰も知らない。  幽霊囃子と呼ばれている。  この場を離れれば聞こえなくなるが、近づこうとしても近づけない。  空の上や地の底から聞こえてくるわけでもない。音の出所を探ろうとすると、ぐるぐると周囲を巡り歩く羽目になる。  音はすれども姿は見えず、探す者を誑かすように遠くで囃子が鳴り続く。  寂れた社へと続く暗い石段に腰掛け、巫女装束のナユタはぼんやりとその音を聴いていた。  遠い昔にも、似たような経験をした気がする。  独りで、暗い場所で、疲れて、途方に暮れて──  よくよく考えるまでもなくそれは気のせいで、おそらくほとんどの人間には、子供の頃にこんな時間を夢想したことがある。  暗い神社の石段に腰掛け、誰も通らない眼下の道を眺めながら、祭り囃子に耳を澄ます──  竹林がかさかさと笹を鳴らし、見上げた夜空には数えられる程度の星が瞬き、肩を叩かれて振り返ると誰もいない──  彼女のそんな夢想は、メールの着信音によって中断された。  中空に浮かべたメニューウィンドウに、フレンドからのメッセージが表示される。 【 やほー。なゆさん、今何してる? 】  ナユタは俯き、数瞬、眼を瞑る。行動を切り替えるスイッチのようなもので、彼女の癖である。  細く息を吐ききった後で、彼女は素早く返信を綴りはじめた。 【 《幽霊囃子》の探索です。クエストの発動条件が不明で、いろいろ試していました 】  ほとんど間をおかずに、次のメッセージが返ってきた。 【 あれかぁ……〝お囃子の音がするのに見つからない〟、〝お賽銭をいれると泣き声がするから、たぶんそれがスイッチの一つ〟って奴だよね? 】 【 それです。他に何か、情報ありませんか? 】 【 情報っていうか、根拠の怪しい噂だけど──配信から三日経っても進展なしってことは、何か特別なキーアイテムが必要なんじゃないかって。そっちは後回しにして、一緒に他のクエストやらない? 《かごめ、かごめ》で手頃な刀が手に入るらしいんだけど、恐怖度が八で、ちょっと一人じゃ怖くて── 】 【 わかりました。合流します 】