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作者:猪野志士,吉武
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2017-01-06(ASCII Media Works)
价格:¥610 原版
文库:电击文库

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気づけば鎧になって異世界ライフ  気がつけば、薄暗い部屋にいた。  丸い天井が見えるので姿勢は仰向け。まだ陽が高いのか、明かり取りらしき小さな天窓から差す光がたちこめるホコリを照らしている。  壁は灰褐色の不揃いな石で組まれていて、蔓や苔に覆われているのを見るに長らく人は出入りしていないようだ。  好んで入るような場所ではない。見覚えもない。それどころか、 (あれ、おい…………なん──だ、これ?)  目を覚ます以前の記憶が、ない。  白紙、とは違う。例えるならめちゃくちゃに塗り潰されたような、乱雑に消しゴムをかけられたような。ともかく、自分がたった今生まれたわけではないことだけは断言できる。  過去は、ある。  けれど何ひとつ思い出せない。自分が何者なのか、わからない。 (おお、つまりこれがいわゆる「ここはどこ、わたしはだぁれ?」状態! ……って、嬉しくもなんともない!)  気味が悪く、それ以上に滑稽だ。ただいくら馬鹿げていてもこれは紛う方ない現実で。 (わけわからんけど、とりあえず死んでないだけマシ、か……? 参ったな)  混乱したまま、気持ちだけでも落ち着かせようとして。 「えっと……もしかして、失敗?」  軽やかな鈴を想起させる声が、淀んだ空気を震わせる。  聞き覚えのない、記憶がないので当然だが、若い女性のもの。天井ばかり見上げていて気がつかなかったが、この狭い部屋には他にも人がいるのだ。 (助かる! 何か知ってるといいんだが……って、あん?)  話しかけようとして、声が出なかった。しかも身体が動かない。指はおろか、目蓋さえも。  そもそも五感のうちいくつかがおかしい。床や服とは触れているはずなのに質感や温度がふわふわと曖昧だし、においも感じない。まともなのは視覚と聴覚くらいか。 (おいおいおい、ホントどーなってるんだよ。けど、このままってわけにも……っと)  どうにか声を出そうとする。口の感覚もないものの、意識してイメージして、手探りで。 「……ぉん」  すると思ったよりもあっさりと言葉は音になった。ただ意味のない声だったので女性は気づかず、なので今度はハッキリクッキリと、 (フレンドリーに。親しげに……よしっ) 「ヘーイ彼女! ちょっとオイラとお茶しなぁってなんだこの声!」 「ひぅ!?」  細く短い悲鳴が薄暗い部屋にこだまする。けれど