ロードス島伝説 全6巻
【合本版】
ロードス島伝説
全6巻
水野 良
角川スニーカー文庫
目次
ロードス島伝説 亡国の王子
ロードス島伝説2 天空の騎士
ロードス島伝説3 栄光の勇者
ロードス島伝説4 伝説の英雄
ロードス島伝説 永遠の帰還者
ロードス島伝説5 至高神の聖女
ロードス島伝説
亡国の王子
水野 良
角川スニーカー文庫
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目次
序章
第Ⅰ章 たちこめる暗雲
第Ⅱ章 王子の決断
第Ⅲ章 蠢動する魔神
第Ⅳ章 帰還せし者
あとがき
序章
若者は、たしかな手ごたえを感じていた。
彼の弓から放たれた矢は、若い雌鹿の首筋を射抜いたはずだった。
「行けっ!」
若者は、彼の足下に身を伏せて、主人の命令をじっと待っていた黒犬に声をかけた。
訓練された猟犬は一声吠えると、おびただしい血を流しながらも全力で逃げようとする雌鹿を追いかけはじめた。
若者も、犬の後を追って走りはじめる。
そう長く走ることはない、と若者は思っていた。流れでる血は哀れな雌鹿の体力を奪い、すぐに動けなくするだろう。
傾斜のきつい森を走るのは、ずいぶん骨が折れたが、獲物を射止めたという喜びのため、少しも気にならなかった。
ここ一月ばかり、若者は一匹の獲物も仕留められずにいた。なにしろ、獲物となるべき森の動物たちの姿が見つからなかったのだから、いかに腕に自信があってもどうしようもない。
若者が狩人となってから十年にもなるが、こんなことははじめてだった。
ロードス島西南部に位置するここモス地方の森には、たくさんの動物が棲息しており、狩人にとっては天国のような場所なのだ。
何か異変が、と不安を覚える日々が続いていた。だが、そうではなかった。ただ、運が悪かっただけなのだ。
もしかしたら、竜ドラゴンが上空を飛んだのかもしれない。その姿を見て怯えた動物たちが、この付近の山から逃げだしたのだろう。このモスの山中は、竜ドラゴンが多数棲息していることで有名だったではないか。
そのとき、若者の忠実な従僕が、けたたましく吠えたてる声が聞こえてきた。
獲物が力尽きて