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作者:和ヶ原聡司,029
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2017-02-10(ASCII Media Works)
价格:¥630 原版
文库:电击文库

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勇者のセガレ   序章 平和な家庭の終わりの始まり  両親には、子供が決して見ることのできない過去の人生がある。  そんな当たり前の事実をはっきりと自覚したのはいつのことだったか、十八歳になったばかりの剣崎康雄は思い出せない。  だがこの年齢になれば、自分が家族のことをなんでも知っているなどとは言えないし、知らなくてもそれほど問題がないということも分かってくる。  そして知らないことが多くても、家族仲は良いと言える部類だったはずだ。  そこそこ大きな会社につつがなく勤める父。今は専業主婦だが時々パートをこなす母。中学三年生という、自分にも覚えのある難しい年頃の妹。  父が会社でどんな仕事をしているのか具体的なことは何も知らないし、自分が学校に行っている間に母がどのように過ごしているかも知らないし、自分の母校に通っている妹の学校生活が自分と同じだとはとても思えない。  逆に父も母も妹にとっても、康雄の生活の大半は見えているようで見えていないはずだ。  高校生という社会的立場や一日のタイムスケジュールなどの、公に設定された枠は見えるだろう。  しかし康雄が高校で友人や教師とどんな話をし、どんな思いを抱いて学業に臨み、家にいない間どのように過ごしているのか、具体的なことはほとんど知るまい。  それでも、父と、母と、自分と、妹と、四人家族はそれぞれのポジションでそれなりに家族の和を保っていたはずだ。  だが今、康雄の目の前に繰り広げられている光景は、そんな康雄の小さな自信を粉々に打ち砕くものだった。 「ただい……ま」  春先の、まだ肌寒い気候の中、西日が差し込むリビングに入った康雄の耳に響くのは、ダイニングの冷蔵庫の唸る音だけ。  康雄は学校帰りの制服姿のまま、鞄を下ろすこともできずに立ちすくんでいた。  肩を落とした表情の窺えない母。  目を薄く開けて口を引き結んだまま、腕を組んだ妹。  そして何より、十八年の間に数えるほどしか見たことの無い、父の険しく、厳しい顔。  何か途轍もなく悪いことが、家族の身に降りかかった。  それだけは理解できた。  康雄が帰宅したことは全員が分かっているはずなのに、誰一人として顔を上げようともしない光景の異様さが、見えざる事態の重要性を物語っている。  今朝、いつも通り小言を言われながら寝床を出て、いつも通り妹と