新ロードス島戦記 全7巻
【合本版】
新ロードス島戦記
全7巻
水野 良
角川スニーカー文庫
目次
新ロードス島戦記 序章 炎を継ぐ者 新装版
新ロードス島戦記1 闇の森の魔獣 新装版
新ロードス島戦記2 新生の魔帝国
新ロードス島戦記3 黒翼の邪竜
新ロードス島戦記4 運命の魔船
新ロードス島戦記5 終末の邪教(上)
新ロードス島戦記6 終末の邪教(下)
新ロードス島戦記 序章
炎を継ぐ者
新装版
水野 良
角川スニーカー文庫
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本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
Contents
Ⅰ 炎を継ぐ者
Ⅱ 魔獣の森
Ⅲ 暗黒の島の領主
Ⅳ 生命なき者の王
はじまり ~戴冠式~
あとがき
1
下弦の月が、東の空に淡く輝いていた。
砂漠の夜は、灼熱の昼間が幻想であったかと思わせるほど厳しく冷えこむ。
雲ひとつない空には無数の星々が輝き、見上げると天地が逆転し、虚空へと落ちてしまいそうな錯覚を覚える。
そんな夜空へ、煙が一筋、風にたなびきながら昇っていた。
炎に照らされ、下の方は赤く、昇るにつれて白くなり、やがて闇と混ざりあうように黒く薄くなってゆく。
荼毘の煙だった。
荼毘にふされているのは、ここ〝風と炎の砂漠〟に集落を営む〝炎の部族〟の族長ダレス。オアシスの街ヘヴンを巡る先日の戦いで、命を落とした。
炎の部族の仇敵であるフレイム王国──いや、もうひとつの砂漠の部族〝風の部族〟の使者が、今日の夕刻、この地を訪れて、族長の亡骸を引き渡してくれた。
炎の部族の民の全員が見守るなか、族長の遺体は、積みあげられた薪の上に置かれ、一人の娘によって点火された。
そのとき使われた松明は、今もその娘の手にある。
ナルディアというのが、娘の名前だ。
夜空の色をした瞳が、荼毘の炎を映して、今は赤く染まっている。
漆黒の髪を頭の後ろで布でくくり、背中へと垂らしている。砂漠焼けした肌は小麦色、全体にほっそりとしているが、瘦せているのではなく、引き締まっているという印象を受ける。胸の膨らみはまだ薄く、腰の線もいくぶん硬く感じられた。十代の半ばをすぎた、少女から大人の女性へ