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作者:紺野アスタ,竣成
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-10-25(集英社)
价格:¥600 原版
文库:DashX文库

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尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る この本は縦書きでレイアウトされています。 Contents 序章 一章 ゴースト 二章 ネガティブシンクロ 三章 レッドシグナル 四章 赤の潜像 終章 ダッシュエックス文庫DIGITAL 尾木花詩希は褪せたセカイで心霊ゴーストを視る 紺野アスタ       序章  廃墟と化した古いビルの通路を、スマホの明かりを頼りに歩いていた。  テナントのシャッターが下ろされていて、辺りは真っ暗だ。しんと静まり返り、微かな足音もやけに響く。  ふいに足下で、甲高い音が反響した。  空き缶を蹴ってしまったらしい。  転がる缶の音が遠ざかって静かになるのを待って、また歩き出す。 「……あいつ、どこ行きやがった」  角を曲がったところで、前方に光が漏れている場所を見つけた。  窓は全て木の板で塞がれているが、その板が割れて、外の光が侵入してきている。 「――っ!?」  人が倒れていた。  暗闇を切り裂くように差した光が、床に倒れた人の頭部を照らしていた。 「尾木花!」  思わず駆け寄るが、捜していた俺の連れとは違っていた。  髪の長い女……のマネキンだ。 「びびらすなよ……」  安堵した俺の背後で、コンクリートの破片を踏むような音がした。 「……邪魔」  ぼそりと言う声。  振り向くと暗がりに、制服姿の小柄な少女が、カメラを構えて立っていた。  画角に俺が入っているらしい。脇へどくと、カメラ少女は尋ねた。 「撮っていい……?」 「あと何枚だ?」 「……十六」 「おかしいぞ。たしか昨日は、二十二枚残ってたはず」 「……」  ふいっと、知らん顔を決め込む。子供か。 「まあいい。許可する」  俺が答えると、カメラ少女はファインダーを覗いた。左手の指で、レンズの胴の部分を回すように操作する。手動マニユアルでピントを合わせているのだ。  それは最新型のデジタルカメラではなかった。  傷だらけのクロームメッキに、部分部分が剝げ落ちた黒い革張りのボディ。三角に尖った頭に誇らしげに『F』と刻印された骨董品のようなカメラ。  カシャッ――  小気味よいシャッター音が暗闇に響く。スマホの電子音とは違う、本物の音。  写真のことなどさっぱり解らない俺も、この瞬間だけは好きだった。時間と空間が切り取られ、フィルムに焼き付く