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作者:杉井光
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2017-02-02(ASCII Media Works)
价格:¥702 原版
文库:电击文库
丛书:火目の巫女(3)
代购:lumagic.taobao.com
火目の巫女 巻ノ三  歌が聞こえていた。  いくつもの幼い声が重なり合った、高く澄んだ節である。  一人一人の歌声は少しずつ拍をずらして揺らぎ、また寄り添い合い、それらが大きな流れを成し、風に乗って高い空を渡る鳥の群れのような旋律を形作っている。  豊日はしばらく、池縁の茂みの中に立ちつくして、その歌声に聞き入っていた。  水面には、白い狩衣を纏い太刀を佩いた童子の姿が映っている。もう何百年も変わらない己の姿だ。  目を上げる。池と庭を隔てた向こう、板張りの広い廂に、揃いの白衣を着た数人の娘達の姿がある。みな床の上に脚を投げ出して座り、曇り空に向かって細く澄んだ歌声を差し伸べている。豊日のいる場所からでは、だれがだれだか見分けもつかない。  池を迂回し、庭に出て廂に近づく。じきに顔は見てとれるようになるが、どうせ一人も名前を憶えていないことを豊日は思い出す。  娘達が豊日の姿に気づき、歌うのをやめた。 「豊さま」  中の一人、背が低く、髪を左右で二つの輪に結った童女が、手を振ってくる。名はなんといったか。 「邪魔したかの」 「豊さまでよかった。他のだれかに見られたら、叱られてしまいますもの」  その童女が言い、他の五人もくすくすと笑い合う。 「良い歌じゃな。だれに教わった?」 「んん。教わってはいません。なんとなく」  童女は首を傾げる。  なんとなく。では、この娘が作った歌か、とも思う。 「歌うのがお前様達の役目ではあるまいに」 「でも、千木良さまも、楽の心は大切にした方がいいって」 「他の者にも、そうやって稽古を怠けていた言い訳をするつもりか?」 「ひゃぅ」  童女は頭を抱えた。他の五人が、今度は声を立てて笑う。  たしかに巫女にとって楽の音は必須ではあるが、生きているうちにそれを愉しむ心は必要なのだろうか、と豊日は思う。 「子供のうちは役目もなにも気にせず、遊ぶがよい。わしのように歳を取れば、いずれ歌などどこかに置き忘れる」  どのみち歳を取ることもなく、贄として生を終えるのだから。  豊日は胸中で、そう続ける。 「豊さまだって子供じゃない」  童女はそう言って笑った。笑うたびに、頭の左右に細く結った髪の輪がふゆり、ふゆりと揺れる。蝶の羽のようだと豊日は思う。短い春を歌いながら過ごす蝶だ。 「そう見えるかの」  背丈も娘達