おにぎりスタッバー
おにぎりスタッバー
大澤めぐみ
角川スニーカー文庫
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本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
CONTENTS
第１章 おにぎりスタッバー ONIGIRI STABBER
第２章 おでこにスタンプ ODEKO NI STAMP
第３章 えおにずむスターレット EONISM STARLET
第４章 おにもりカスタード ONIMORI CUSTARD
最終章 ぎりぎりスタッバー GIRIGIRI STABBER
「自分の好きなように自由に生きなさい。せっかく生まれてきたんだもの、自分のやりたいように自由に生きなきゃ甲斐がないでしょ」
そんなようなことをよく言っている母親だった。あ、なんか変に過去形になっちゃったけど現役バリバリで存命中なのでご心配なく。ひとり娘にそのように言って聞かせて育てるような母親だから当然のように本人も好きなように自由にやっているみたいで昔から家は留守にしがちでどこでなにをやっているんだかよく分からないし、当たり前のように家のことなんかろくろくやらないしって感じで仕方がないから今日も今日とてわたしはお母さんが散らかすだけ散らかして投げっぱなしのやりっぱなしな服とか服とかお洋服とかを片づける。クイーンズコートのブラウスは裏返しにしてネットに入れてやさしくお洗濯。リリーブラウンの色柄ニットはおしゃれ着用洗剤で手洗いして日陰に平干しする。５ＬＤＫ二階建ての我が家はお母さんとわたしのたったふたりしか住んでいないのにたくさんの大量なものすごい量のお洋服たちでもうパンク寸前。椅子という椅子の背もたれには上着だのジャケットだのアウターだのが二重三重に重ねて掛けられているし、せっかくの仕立てのいいコートも明らかにお母さんが下に敷いて寝ちゃったみたいな皺が寄っているし、ソファーにはバッグや鞄やバスケットがドカドカ座っていて人間が座るスペースはないし、あらゆる隙間には忘れ去られ出番を失ったアクセサリーや小物たちがひっそりと息をひそめていて再び表舞台に立つ日を夢見ている。お母さんが通ったあとはあれもこれもぜーんぶ散らかしちゃって散らかしっぱなしで台風のあとみたいな目も当てられないありさまで、お母さんだけがひとりで
