エス·エクソシスト
エス・エクソシスト
霜月セイ
角川スニーカー文庫
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本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
Contents
序章
一「瑠璃崎蒼音は祓エク魔ソシ師ストである」
二「簡単に生き死に語ってんじゃねえよ」
三「アレルヤ」
終章
あとがき
真夏の生温かい風が頰を撫でる。
小さな生物のかすかな気配一つしない、静寂に恐怖を覚えながら二人の少女が廃屋を前に佇む。互いに中学を卒業して以来会う事はなく、今日が久々の再会である。といっても周囲はどう思っていたかは知らないが、自他ともに認める優等生と派手な印象を与えるもう一人の少女は正反対の人種であり、仲が良かったとは言えなかった。互いに違うグループに属していたため、共通点といえば、ここへ訪れる理由くらいだ。
「やっぱり、マリミちゃんにも届いたんだ」
「じゃなきゃここに来てねえよ。そういう希美も同じだろ」
恐怖からか、マリミは苛立った口調で希美との会話を終わらせる。
数年前まで在籍した中学校、鈴風東中学校。近所でも有名な学力を重視した公立の中学校の新校舎の裏には、使われていない部活棟が存在する。
棟という程の規模ではない、一階建ての小さな建物。
今では廃屋と化し、再利用される事も取り壊される事もなく、ただ存在だけしている。
在学中も、怪談じみた噂はよく耳にし、滅多に人は近付かない。
──それだけじゃないか。だって、この場所は……
と、希美は至る所に折れた跡の残る古ぼけた手紙に視線を落とす。そこには、「松永希美様」という文字がある。封筒にきちんと入れられている筈なのに、その手紙は年代を感じさせる程に紙自体が傷だらけであった。まるで過去から送られてきたように。
同じものを、マリミも握り締めていた。それを一瞥した後、マリミは差し出し人の名前を見る。少し癖のある字で、「えんどう せいじ」と書かれている。その字を見ていると、字自体が変化してとぐろを巻いているような錯覚に陥り、マリミは目を逸らす。
そして、大事に持っていた手紙を突然破き始めた。
「ちょっと!」
「うるせえな! こんな紙切れ一枚に振り回されて、バカみたい!」
と細切れになるまで