勇者と勇者と勇者と勇者4
小学館eBooks〈立ち読み版〉
勇者と勇者と勇者と勇者 4
川岸殴魚
イラスト すまき俊悟
目次
1「鳥のように自由に。空き巣のように闊達に」
2「それはなにかを吸い取るタイプの踊りだろ!」
3「主にお塩とコショウだよ!」
4「俺が思うに、宝箱ってのは勇者に開けられるために存在しているんだ」
5「めっちゃ、凶暴じゃないですか!」
6「悪いな。実に悪い! なんて悪い薬屋さんなんだ」
7「こんなの食べちゃったら死んじゃうねー!」
終章「私は名義貸し」
あとがき
勇者。
その存在は人類の希望であり、仰ぎ見るカリスマであった。
人類は勇者の活躍に自らの夢を託した。
自らの夢を彼らの冒険に。彼らの偉業に。
しかし人々は忘れている。
自らにも力はあること。
人類の本当の力は知性と協力する力であることを。
人々は自らの内に眠る力を忘れ、勇者に夢中になる。
勇者はその期待を背に世界を巡る。
前人未到の原野。
底知れぬ深淵の洞窟。
行列の絶えない定食屋。
いま四十代女子にブームの最新フィットネス器具。
勇者は世界を巡る。
本来の目的を忘れ、魔王を忘れ。
──勇者大迷走時代の真っ最中である。
王都アリア。
明るい陽の光が燦々と石畳を照らし、行きかう人々も活気に満ちている。
最近流行りのオープンテラスを備えたカフェもほぼ満席。
客はほぼ若い女性。流行りの服装に流行りのメイク。そしてテーブルには最近流行っているらしい、ベリーと生クリームたっぷりのパンケーキ。なにがおもしろいんだか、弾けるような笑い声をあげている。
──ルディ・シュミットは勇者である。
ルディはカフェの向かいにある古びた酒場の入り口に腰を下ろし、勇者特有の鋭い観察眼をもって、カフェの様子を観察していた。
流行りのカフェでリア充がなにを楽しんでいようが、基本的に勇者には関係ない。勇者はパンケーキに並ばない。
流行りのカフェでリア充がなにを楽しんでいようが、基本的に勇者には関係ない。
勇者はパンケーキに並ばない。カフェラテも飲まない。飲むとしてもラテアートを一顧だにせず飲み干す。
とはいえ、クエストがどこに転がっているかわからない。パンケーキに夢中になっている女子がガーゴイルに襲われれば勇者の出番だ。できれば襲われてほしい。