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作者:乙野四方字,ナナメダケイ , コンパイルハート
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-11-10(ASCII Media Works)
价格:¥570 原版
文库:电击文库

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神獄塔 メアリスケルター ~光の在処~  とにかく、甘いものが食べたかった。  俺が小さな子供だった頃は、まだ砂糖というものが手に入った。真っ白でさらさらな粉で、舐めるととても甘いのだ。  貴重なものだからとあまり口にはできなかったが、何かいいことがあった時などは、砂糖を使った甘いお菓子を親が作ってくれることもあった。  今、砂糖なんてものはもう滅多に手に入らない。  だけど、あの甘さは人間に中毒を引き起こす。大人たちはなんとかして代用品でも作れないかとずっと試行錯誤を重ねてきた。  例えば、砂糖大根と呼ばれるものがあるらしい。  それは大根によく似たテンサイという野菜で、刻んで煮詰めてあれこれすると、砂糖とは違うが甘い液体ができるのだという。  今はまだ、栽培も精製も目立った成果は出ていない。しかし、もしこの試みが上手くいって量産体制に入れたら、いずれ俺たちの口にも再び甘味が届く日が来るのではないか、ということだった。  ……はっきり言うが、待てない。  もう随分と我慢した。だけどどうしてもあの甘さが忘れられない。米をよく嚙めば甘みが出てくる、なんて対症療法じゃあもうごまかせないところまで来ていた。  そして俺は今、砂糖大根の畑にこっそり潜り込もうとしている。  煮出せば甘い液体が取れるなら、そのままかじっても甘いはずだ。  一本でいい。それほど大きくなくていい。とにかく何か甘いものを、俺と、あいつの分だけでも手に入れられれば── 「こら! マモル!」  背後から聞き慣れた声に名を呼ばれ、心臓が大きく動いた。  振り向くと、そこには案の定の見慣れた顔。 「朝からなーんかそわそわしてると思ったら……こんなことだろうと思ったよ」 「ヒカリ……尾けてきたのか」  綿毛のようなふわふわした髪を揺らしながら、困ったように眉をハの字にして、腰に手を当てて俺を見ている女の子。名前はヒカリ、俺の幼馴染みだ。 「駄目だよマモル。大人の人たちが大事に育ててるんだから」 「一本ぐらい分かんねーよ。小せぇの一本だけ抜いて、穴は埋めとけば」 「そういう問題じゃないでしょ。盗っちゃだめ」  ほしいものは力尽くで手に入れる主義の俺とは正反対の性格で、真面目で誠実、陳腐な言葉で言うなら『優しい』となるのだろう。そんな性格のくせに、俺にはやたらとこうして説教をかましたがる。 「ちっ、綺麗事ば