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作者:時雨沢恵一
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-11-10(ASCII Media Works)
价格:¥610 原版
文库:电击文库
丛书:キノの旅(20)
代购:lumagic.taobao.com
キノの旅XX the Beautiful World 第一話 「人間の国」  ─the Ark─  私の名前は陸。犬だ。  白くて長い、ふさふさの毛を持っている。いつも楽しくて笑っているような顔をしているが、別にいつも楽しくて笑っている訳ではない。生まれつきだ。  シズ様が、私のご主人様だ。いつも緑のセーターを着た青年で、複雑な経緯で故郷を失い、バギーで旅をしている。  同行人はティー。いつも無口で手榴弾が好きな女の子で、複雑な経緯で故郷を失い、そして私達の仲間になった。  バギーは、冷たい空気の中を進んでいた。  ここは背の高い木々が生い茂る森林地帯で、人の手が全くかかっていないので、多種多様な緑色を見せている。中には、葉が全部落ちているものもある。  大地には大きな川がゆったりと一本流れていて、その脇には一定の幅で木々がない。川が氾濫する度に流されるので、木々が育たないのだろう。小さな草を生やす平らな空間──、そこがちょうど、道になっていた。  道は川に沿ってのんびりと蛇行して、森の中を延びていく。道もまた、延びていく。  空は灰色で、朝からずっと陰鬱な雲しか見えない。今にも雪が降り出しそうだが、意外なことに、いつまで経っても降ってこない。  太陽は見えないが、私の体内時計が告げている。もうそろそろ、お昼だ。 「休憩をしようか」  運転席でハンドルを握るシズ様が言って、道が川面にひときわ寄っている箇所で止めた。緑のセーターの上に着ていた防寒着を脱いで、バギーの席の上に置いた。  助手席に座っていて、足の間に私を収めていたティーが、小さな体でバギーからひょいと飛び降りる。同じく着ていた、中綿の入った防寒着の上下を脱いで、いつもの長袖と、ショートパンツ姿になった。風は吹いていないが、それで寒くないのだろうか?  大自然の真ん中でお昼休憩となると、やることはいつも決まっている。何も言わなくても、役割分担ができている。  つまり、シズ様は川に水汲みに、ティーは森に薪拾いに。そして私は、危険な動物──、人間も含む、がいないか、臭いで警戒しつつティーの傍にいる。  見えてはいないが、今頃シズ様は布製のバケツに水を汲むと、それを簡単な浄水器に通しているはずだ。  浄水器は、それほど大きくない筒の中に大小の石や砂、炭や布などを層にして入れたものだ。多少濁った川の水でも、いくつものフィルターを通り