僕の魔剣が、うるさい件について 全4巻
【合本版】
僕の魔剣が、うるさい件について
全4巻
宮澤伊織
角川スニーカー文庫
目次
僕の魔剣が、うるさい件について
僕の魔剣が、うるさい件について 2
僕の魔剣が、うるさい件について 3
僕の魔剣が、うるさい件について 4
僕の魔剣が、うるさい件について
宮澤伊織
角川スニーカー文庫
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信したり、ホームページ上に転載したりすることを禁止します。また、
本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
目次
序章
第一章 夜色の刃
第二章 刀に罵られる日々
第三章 もうひとりの遣い手
第四章 ヴァルカン・ファランクス
第五章 赤黒の虎
第六章 この世のものじゃない
第七章 怯える魔剣
第八章 夜来たる
終章
あとがき
序章
紙で手を切ったことがあるかい?
薄くて鋭い、ざりざりした感触が、絶妙な角度で皮膚に当たって、さっと通り抜ける。
あっ、と思ったときにはもう遅い。
表皮に走る細い傷と、その中から沁み出してくる真っ赤な血──
刀や剣で斬られる感触も、あれと似てる。
ただし、あれよりもっと深く、鋭く、そして、もっと……痛い。
祖父を亡くした、高校一年の夏。
魔剣と出逢った僕が巻き込まれたのは、そういう世界だった。
第一章 夜色の刃
1.
蔵の扉には大きな鉄の錠前がついていた。
ゲームのアイテムじみた大きな鍵を差し込んでひねると、ざりざりと錆のこすれる感触をともなって、錠が開いた。
扉を開けると、真夏の外気とは異質な、ひんやりした空気が顔を撫でる。
天井からぶら下がった裸電球が点灯すると、蔵の中に積み上げられたたくさんの箱や器財が照らし出された。
「うわっ……結構あるなあ」
早瀬吏玖は呟いて、少し途方にくれる。
──一人で片付けられるのか、これ?
「……しょうがないな」
できるところからやるしかないだろう。
吏玖はため息をついて、蔵の整理に取りかかった。
屋敷の持ち主の、祖父が亡くなったのは先月だ。
祖父は吏玖に残された、唯一の肉親だった。
急なことで、正直なところ吏玖にはまだ実感がない。
主の居ないこの屋敷は、近々売り払う方向で話が進んでいる。
都心か