彼女たちのメシがマズい100の理由 全6巻
【合本版】
彼女たちのメシがマズい100の理由
全6巻
高野小鹿
角川スニーカー文庫
目次
彼女たちのメシがマズいの理由
彼女たちのメシがマズいの理由2
彼女たちのメシがマズいの理由3
彼女たちのメシがマズいの理由4
彼女たちのメシがマズいの理由5
彼女たちのメシがマズいの理由6
彼女たちのメシがマズい100の理由
高野小鹿
角川スニーカー文庫
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目次
序 「彼女には1つだけ、どうしようもない欠点がある」
一 「何故、英国淑女に1日3食を任せてはいけないのか」
二 「それは受動的3分間で出来上がる」
三 「99%、彼女の料理はおいしくない」
あとがき
序 彼女には1つだけ、どうしようもない欠点がある
日曜の朝。トントン、と俺の部屋をノックする小さな音が二つ。
返事をする暇もなしに僅かな軋む音を立ててドアが開く。
「葉介。いつまでも寝てちゃ駄目だよ。早く起きて」
現れたのは、俺の幼馴染みである香神紅緒だった。俺はそして認識する──今日もこの時が来たのだ、と。
紅緒は外見も内面も、どちらも相当に落ち着いた印象の女の子だ。
艶やかな長い髪、常日頃からしっとりした雰囲気を纏い、可愛らしいというよりは綺麗な声をしている。最近では珍しいくらい淑やかな性格の女の子であり、少し間の抜けたところはあるが、ダメ高校生の俺には勿体ないくらいの幼馴染みだ。
基本的、には。
「……いや、起きてるって。休みだからって、そんな遅くまで寝てらんねぇよ」
「そっか。そうだね、もう十一時だもんね」
「だろ。まあ、さっき起きたばかりなんだけどさ」
言えない。
実は俺が目を覚ましたのは一時間ほど前で、紅緒が全ての準備を終えて部屋を訪ねてくるのを戦々恐々と待ち受けていただなんて。
絶対に、言えるわけがない。
「──朝ご飯」
「……!」
紅緒がぽつりと言う。真っ直ぐにこちらを見る。
「朝ご飯、出来たから葉介を呼びに来たんだ」
「そうか……わかった。わ、わりぃ」
「ううん、」首を横に振る。「全然。だって私、ご飯作るの大好きだもの。も