彼方なる君の笑顔は鏡の向こう
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イラスト/sekiyu。
デザイン/ムシカゴグラフィクス
序章
たとえば僕が鏡にこう尋ねたとしよう。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだあれ?」
さすれば鏡はこう答える。
「白雪姫っすね」
その反応に、きっと僕は震えるだろう。
「うわぁ鏡がしゃべった!」
そうして『なんでも鑑定団』へ鑑定を依頼する。僕はお金持ちになるのだった。
それはそれとして。
答えを聞いた僕は自意識こじらせた継母よろしく白雪姫に殺意を抱くだろう。でも本当に殺すと将来に響くので、靴にすりリンゴ流しこむくらいで済ますと思う。
懸命にリンゴをすりおろしながら、僕はこう叫ぶ。
「一番美しいのは、音和彼方である!」
なにが言いたいかというと、僕は音和彼方が好きなのだ。
幼馴染という関係から、それを認めるのに時間がかかった。しかし認めてしまえば、幼馴染という関係はきらきら輝いて見えた。
けれど僕は、最後の一歩を踏み出せずにいる。
それは言ってしまえば、僕は彼方にとってなくてはならない絶対の存在だから。
僕が想いを告げれば、この関係は少なからず形を変える。
変わったとき、僕たちはうまくやっていけるのだろうか。
いっそ彼方が二人になってくれれば、ひとりは幼馴染のまま、もうひとりに告白できるのに。そんな不純な妄想をしてしまうほど、これは難題なのだ。
そうこうしているうちに、僕たちは高校一年生になった。
空が青いように、鏡がしゃべらないように、彼方が分裂しないように。
いつしかこの想いは、伝えてはならないもののようになっていた。
まさかそんな日常を後悔する日が来るなんて──思いもよらなかった。
そのとき僕は気づくこととなる。
僕にとっても彼方は、絶対の存在だったのだと。
たとえて言うならば、彼方は僕にとって太陽であり、月でもあった。
1章 かなかなブレイク
教室から人が少なくなるにつれ、雑談する女子の声が際立って聞こえた。
窓際に座る僕は活気づく運動部を俯瞰するのをやめ、ふいと正面を見やる。
今日も今日とて彼方は、クラスの女子たちに捕まっていた。
「ホント、どう勉強したらそんな頭良くなれるの、彼方ちゃん」
「普通だよ。授業聞いて、