孤高の精霊術士 3 ―強運無双な炎王召喚物語―
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目 次
序 章 封印の綻び
第1章 波乱呼ぶ郷里の香
第2章 無限の砂漠と黒いアレ
第3章 夢と現の境界線
第4章 精霊魔法と形見の剣
第5章 炎王召喚
最終章 現と夢の境界線
ダッシュエックス文庫DIGITAL
孤高の精霊術士3
―強運無双な炎王召喚物語―
華散里
序章 封印の綻び
「気高き紅蓮の精霊よ……。我が呼び声に応えて跳べ!! 『鳳凰斬!!』」
親父の力強い声に呼応するかのように、剣先から出現した紅蓮の炎が地面すれすれの高さを滑るように駆け抜けていく。
「すっげぇ!! 親父すげぇぇっ!!」
目の前を一直線に突き進む炎は、正面に立つマクセヌが生み出した魔法陣へ垂直にぶち当たり、轟音と眩い輝きを辺りに撒き散らす。
同時に巻き起こる爆風に、まだ小さい俺の身体は煽られそのまま後ろに吹き飛ばされていた。
「う、わぁっ!?」
「ハルキさまッ!! きゃぅッ!?」
そんな俺の手を、隣に立つ小さな女の子が慌てて摑むんだけど、結局は二人まとめてその場に転がっていく。
「痛ってぇ…………」
手を繫ぐ小さな俺達は、ゴロゴロとしばらく転がった後、大樹の幹にドンとぶつかりそこで止まった。
そんな俺の目に焼き付いていたのは、抜けるように高く青い空と、吹きつける風に乱れる銀の髪。
爆音に気がつき、慌てた顔で駆け寄るお袋。
遠くからは「畑が荒れるじゃろうがーっ!!」と叫ぶ、じいちゃんの怒声が聞こえていた。
突如としてプツリと途切れた映像と、訪れた暗闇にゆっくりと瞼を開ければ、視界に映るのは見慣れた天井。
そのまま視線を巡らせれば、窓から柔らかな月明かりが差し込み、涼やかな夜風が吹き込んでいた。
「――――夢、か」
深く息を吐き出し、ぽつりと呟く。
そりゃそうか。
親父もお袋も、とうの昔に死んでしまって墓の中だ。
夢の中でも「これは夢だな」と薄々感じ取っていたんだが、まるで物語の一部を覗いているような不思議な感覚で……。
なんていうか、過去の記憶の断片に迷い込んだっていう印象だった。
いや、多分。あれは俺の過去の一部なんだろう。
俺にはじいちゃんから受け継いだ精霊術士の力があるらしい。
それから昔の記憶の一部を封印という形で抑制されてい