英雄教室 6
この本は縦書きでレイアウトされています。
CONTENTS
第一話 「バレてる?」
第二話 「クレア・マウンテン」
第三話 「ルナリアの悩み」
第四話 「普通人の生活」
第五話 「マッサージ師ブレイド」
第六話 「賢者クレイ」
第七話 「脱怪人赤マント」
第八話 「デートのお手本」
第九話 「美女と魔獣」
ダッシュエックス文庫DIGITAL
英雄教室6
新木 伸
第一話「バレてる?」
○SCENE・Ⅰ「イライザの研究室」
「はい。じゃあここに、ばしゅーって、火属性の〝精霊力〟をお願いします」
「ん」
ブレイドは言われるままに――。ぶぅんぶぅんと、うなりを上げて、明滅している謎の球体に、掌を押しあて――火属性の精霊力を注ぎこんだ。
「じゃあつぎに、こっちには〝気〟をお願いします。あとで分離するのが面倒くさいんで、闘気だの魔力だの精霊力だの混ぜないで、気だけ、純度九九パーセント以上で頼みますよ」
「ん」
ブレイドはまた言われるまま、球体に〝気〟を注ぎこんだ。
純度九九というのも、べつに難しいことではなくて――。やろうと思えば九九・九九九まで純度を上げることができる。まあそこまで純度を引き上げると、〝氣〟と呼ばれる、別種のものに変化してしまうのだが――。
「ああほらっ。アイスが垂れますって」
「ん」
片手で持ってたアイスが垂れそうだ。ブレイドは、アイスをぺろーりとやった。
「精霊力。なんに使うんだ?」
「もちろん研究に使うんですよ。動力源として。メガワット級の動力は作るのもメンテするのも面倒ですから。その点、気や精霊力は便利ですねー。協力してくれる人がいれば――ですけども」
ブレイドが聞くと、イライザは答えた。
なるほど。電池みたいなものか。俺は電池がわりか。まあいいか。
「しかし……、大丈夫なんですか?」
「なにが?」
こんどはイライザから聞かれたので、ブレイドは聞き返した。
「普通、これだけの量を絞り出したら、からからのミイラみたいに干上がっちゃうものなんですが」
「ああ。コツがあるんだ」
ブレイドは軽く言った。
気や魔力といった力の源は、本人の生命エネルギーだ。その生命エネルギーを単純変換していたなら、イライザの言うように、この量を絞り出すことは不可能だろう。ど