キミもまた、偽恋(オタク)だとしても。1〈下〉
目次
序章 ゴールデンウィーク前日
第一章 ゴールデンウィーク、前日の夜
幕間1 調査結果
第二章 同人誌即売会
幕間2 佐竹則武の視力
第三章 リアルとウェブですれ違い
第四章 初デート当日
第五章 デートの夜、それぞれ
終章 長島薫子の独白
四月も末日近くになった本日。
俺、村上政樹は、この一ヶ月ですっかり自分の居場所として定着した、岩下学園一年A組の自席にグッタリと座り込んでいた。
「ふわああ……」
「おお、すげえあくびだな、朝から。ひょっとして、村上寝てないのか?」
前の席に座る友人の安藤茂が、こっちを向いて呆れたような口調でそう言う。
今の俺には、それに反論するのも、億劫でならない。
「いや、寝た。寝たけど……ちょっと遅くまで起きてた。どうせ明日からゴールデンウィークだし……」
それだけ言って、俺は机に突っ伏して目を瞑る。
噓は言っていない。
寝たのが明け方の六時過ぎで実質睡眠時間が、一時間強でも寝たことに間違いないはずだ。
「一人暮らしが羨ましいような、羨ましくないような、だな」
頭の上で安藤が苦笑しているのが気配で分かるが、今の俺には頭どころか、まぶたを持ち上げるのすら億劫だ。
(やっぱ、あれだな。一人暮らしでネトゲを楽しむには、強い意志がないと生活破綻させるわ)
つまり、俺はやめておいた方が無難だということだ。
もっとも、それが分かったところで、止められるような理性があれば、俺はとっくにオタじゃなくなっている。
(昨日は下手に余裕があったのが拙かったよなあ……)
昨晩俺は、日頃より一時間ほど早く、勉強その他のノルマを終えることに成功したのだ。
そこで、約一ヶ月ぶりにオンラインゲームにインしたのだが、結論から言うとこの判断が間違っていた。
うん、そうだ。
オタがゲームをやって、適当なところで止められる訳がねえんだよ。
冷静に自分を見つめ返せば、簡単に出せる結論なんだが、あの場でその判断を下すことは難しかった。
やるべきことを終えて、時間があまっていて、そこにパソコンがあって、制止する人間がいない。こういう状況で、一度ゲームのことを思い出してしまうと、我慢するのはもの凄く難しい。
そして、一度始めてしまえば、後はもうどうにもならない。
最初は、「一時間だ