生ポアニキ パンプアップ
目次
序章◆いらっしゃいマッスル~刺客の来訪~
1話◆躍動する筋肉、それはカーニバル
2話◆震える筋肉
3話◆トレーニング・マッスル
4話◆筋肉は止まらない
終章◆いつか、最高になれる日を
■日本国憲法 第三章 第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
■生活保護法 第一条
この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
■生活保護法 第十一条
保護の種類は、次のとおりとする。
一 生活扶助。二 教育扶助。三 住宅扶助。四 医療扶助。五 介護扶助。六 出産扶助。七 生業扶助。八 葬祭扶助。九 恋愛扶助。
下野ナナの足取りは軽い。
ついに今日、夫となるべき男と出会うのだ。
ナナはまだ一二歳、先々月中学一年生になったばかりの少女であることを考慮すれば、凡人からは悲劇に思われるかもしれない。
だが、違うのだ。
これから始まるのは悲劇ではない、喜劇だ。何ならラブロマンスだと言ってもいい。
ナナが生活保護の申請を始めてから早二年、ようやく物語は動き出した。
ナナが狙ったのは生活保護に、新たに加えられた『恋愛扶助』の部分である。
人はパンのみにて生くるものに非ず。衣食住だけでは最低限度の生活とは言えない。愛のある営みもまた基本的人権に含まれるとされ、また同時に未婚率の上昇、出生率の低下の解消といった様々な思惑を含めて追加された――通称『恋愛生活保護』と呼ばれるこれは、他と比べて独立性が高く、未成年による単体での受給を可能としていた。
これには、次のようにある。
■第二章 保護の原則 (必要即応の原則)
第九条 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。
有効且つ適切、ナナにこれを当てはめるのならば……お金持ちで、ナナの生活に口を出してこなくて、無論優しく、結婚後は両親と別居、早々に遺産を残してくたばってくれる……