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作者:七飯宏隆
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-11-02(ASCII Media Works)
价格:¥637 原版
文库:电击文库
丛书:放課後限定勇者さま。(2)
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放課後限定勇者さま。(2)    序章 〝ヴォーケッチ〟  月のない夜空に、野犬の遠吠えのようなサイレンが響き渡る。  惰眠をむさぼっていたビル街の窓という窓に、慌ただしく明かりが点る。けたたましい非常ベルとともに大勢の人影が街路へ飛び出し、無数のサーチライトが獲物を求めて闇を切り裂く。それらの強烈な光が暴き出す輪郭で、ここが黒い夜の海に浮かぶ島であることがわかる。ゆらめく波間へ逆さに映し出された姿は、きらびやかなネオンと古めかしい赤煉瓦のビルに埋め尽くされていて、さながら夢の国の不夜城のようだった。 「──あだだだだだっ」  その、古きよきアメリカを彷彿とさせるレトロなビル街の一角で、日本の男子高校生・格里終夜は死にかけていた。これといった特徴のない、平々凡々たる少年である。高校の制服に学校指定のカバンを背負い、放課後にちょっと寄り道してますといった趣だが、そんな彼が盾にしている明らかに現代日本のものではない煉瓦造りのビルの壁は今、雨あられと撃ち込まれる銃弾で急速に削られていた。自分の悲鳴すら耳に届かぬ銃声の嵐の中で、ネオンの看板が砕け散り、酒瓶の詰まった木箱が吹き飛び、路駐してあったクラシックな車が無惨な鉄の塊へと変わっていく。 「し、死ぬ。マジで死ぬ。なんつー荒っぽい世界だ、ここは……!?」  着弾の度に飛び散る細かな破片から頭をかばいつつ、終夜はあらためてネオンきらめく夜のビル街を見渡した。  カジノ世界〝ヴォーケッチ〟。  この島のみならず、国土のほとんどがカジノとその関連産業で占められているという、特異な社会構造を持つ世界である。異世界間の交流が盛んだった数百年前にリゾート世界の一つとして栄え、〝回廊〟が失われ孤立した今でも、とぎれることなくお祭り騒ぎが続いている。この世界において人生とはロシアンルーレットであり、わずか1ゲームで大金持ちと貧乏人が入れ替わることなどザラ。安穏と生涯を終える者がいない代わりに、死ぬまで底辺に押し込められる者もいない。我々は永遠に続くショーの中で生きているのさ、というのが、ここの住人たちのお気に入りのジョークらしかった。  だが、そんな常軌を逸した世界にもルールは存在している。いや、常軌を逸した世界だからこそ、厳格なルールが存在すると言うべきか。 「──カジノ中心に世の中が回っておる故、殺人よりもイカサマの方が罪が重いのぢゃ。信じら