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作者:七飯宏隆
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-10-27(ASCII Media Works)
价格:¥616 原版
文库:电击文库
丛书:タロットの御主人様。(5)
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タロットの御主人様。(5)      第4章 菖蒲四阿家にて  小鳥のさえずりが聞こえる。  頰に光の当たる温かな気配。それから逃げるように、布団の中でもぞもぞと寝返りを打った。 「ん……」  朝。いつもとなにも変わらない、ありふれた朝。  あたしが秋人の家に転がり込んでからもずっと続いてる、穏やかな朝── 「……?」  夢うつつの中でなにか違和感を覚えて、あたしはぼんやりまぶたを開いた。  やわらかい光の中に、黒光りする柱のようなものが映る。 「……?」  柱じゃない。梁だ。それも恐ろしく古い梁。柱と見まがうほどに太く大きなそれが、何本も視界を横切っている。つまり、あたしが見てるのは天井なのだ。  のたのたとそれを理解すると、自分が横になっていることも自然に認識できた。広い板敷きの部屋の中央に「ぽつん」と置かれた畳、そこに敷かれた布団にあたしは寝ていた。 「……?」  どこだろ、ここ。秋人の家にこんな部屋あったっけ?  ぼーっとしたまま体を起こす。部屋の中はがらんとしていて、あたししかいなくて、夏なのに少し肌寒かった。布団の横には立派な屛風が立ててあり、壁の三面が襖で、残る一面がすだれみたいなもので遮られている。朝の光はそこから差し込んでいた。 「……うにっ?」  のそのそと布団から這い出て、ひんやり冷たい板を踏んですだれ状の御簾を上げると、そこは我が目を疑う別世界だった。  歴史の教科書の中にでも入り込んじゃったかのような、平安時代の寝殿造。渡殿で結ばれたいくつかの巨大建築物と、湖みたいに大きな池と、そこに点在する島々をめぐる朱塗りの太鼓橋が、目の前にあった。琴の音でも聞こえてきそうな典雅さに声も出ない。 「?」  けど、その庭の向こうが急に「すとん」となにもなくなってるのが、とっても奇妙な眺めだった。あたしは半分寝ぼけたまま、辺りに人気がないのをいいことに、庭に向かって開けた廊下っていうか縁側っていうか、そんな感じの簀の子の濡れ縁を歩いて建物の端まで行ってみた。 「……っ!」  なにげなく植え込みと築地の向こうを覗き込んで、絶句。眠気なんて一瞬で吹き飛んだ。 「な、なに、これ……」  庭がすとんと垂直に落ちた先を埋め尽くす、玩具みたいに小さく見えるビルの群れ。その根本を網の目のように走る道路はどれも渋滞中。あわただしい通勤ラッシュの騒音が遠く