現実主義勇者の王国再建記 2
目次
序章 オン・ユア・サイド
第一章 兆し
第二章 二国の群像
第三章 最終勧告
番外編 ある冒険者たちの物語2
第四章 アルトムラの領主
第五章 ランデル近郊の戦い
第六章 紅竜城邑攻謀戦
第七章 李代桃僵
第八章 宣戦布告
第九章 決戦
終章 本当の開幕
戦後への序章
「リーシア、この書類を持っていってくれ」
「……うん。わかったわ」
近頃、ソーマの様子がおかしい。
ソーマから書類の束を受け取りながら、私はそんなことを思った。
最近のソーマは、以前よりも熱心に書類仕事をしている。まるで父上から王位を押し付けられたばかりの頃に戻ったかのようだ。いまはあのときほど仕事も忙しくはないはずなのに、無理に仕事を探して詰め込んでいるような、そんな気がした。
かと思えば、不意にポッカリと空いた暇な時間には、なにをするでもなく、ただボンヤリと窓越しに空を見上げたりしている。以前なら、暇なときは私の部屋に来て、人形やトモエに着せたい可愛らしい衣服などを製作していたのに、最近はそれもご無沙汰だ。
私は黙々と書類仕事をしているソーマを見つめた。
変化はごくわずかなもので、王城にいるほとんどの者は気付いていないだろう。
「………」
「……ん? どうかした?」
私の視線に気付いたソーマが顔を上げた。私は、
「……ううん。なんでもない」
そうとだけ言うと、踵を返して早足に政務室を出た。
「あっ、おい、リーシア」
背中からソーマの声が聞こえてきたけど、振り返ることができなかった。
どういうわけだか、いまのソーマを〝見ていられなかった〟のだ。
「それで姫様、陛下の様子が変……ということでしたが?」
夜、私の部屋へと訪れたジュナ・ドーマさんが、そう言って首を傾げた。
玉音放送の放送番組の準備をしているときに声を掛け、放送後に私の部屋へと来てもらったのだ。ジュナさんはソーマの様子が変だということを伝えると、こんな時間にもかかわらず来てくれたことには感謝しかない。
「座って、ジュナさん」
私はベッドへと腰掛け、ジュナさんに隣に座るようお願いした。ジュナさんが「失礼します」と言って、隣に座ったのを見てから、私は話し始めた。
「なんと言うか……心ここにあらずって感じなの。いつも以上に仕事に打ち込んでるかと思