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作者:七飯宏隆
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-10-27(ASCII Media Works)
价格:¥637 原版
文库:电击文库
丛书:タロットの御主人様。(3)
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タロットの御主人様。(3)      第1章 青い海とマイ海の家  海水浴場といえば──というフレーズで連想されるものの一つに、海の家がある。  要するにあれだ。砂浜に建てられた、休憩所とか更衣室とか食堂とか、そんなのが渾然一体となった掘っ立て小屋。よくマンガなんかで主人公たちがアルバイトしてトラブルに巻き込まれる、定番の場所。浜茶屋なんて呼ばれることもあるんだそうだ。  ……って、日本人ならそれくらい、いちいち説明しなくたって知ってるはず。海へ行けば、誰もがお世話になる施設なんだから。  でも、そうじゃない人も、この現代日本にちゃんと生き残ってるんだなぁ……。 「──お待ちいたしておりましたわ秋人様! この鷺宮籐子が腕によりをかけて作り上げました、私と秋人様だけの『マイ海の家』! とくとご堪能くださいませっ」  目的地の海岸に着いた俺たちを待ちかまえていたのは、一足先に現地入りしていた籐子様と、砂浜に高々とそびえる正体不明の巨大建造物だった。  籐子様は今日も見るからに絶好調なご様子。足元の砂を焦がす太陽より麗しい美貌は大輪の花のようで、思わずひれ伏したくなる高貴なオーラをまとっていた。街を歩けば十人中十人が男女問わずに振り返るほどの、希有な存在感を持つ少女だ。  だけど今ばかりは、彼女よりも目立つものがある。  俺は「ぽかん」と口を開けて立ちつくす担任とクラスメイトたちをその場に残し、晴れ晴れとした顔の籐子様へ近づくと、まわりの目を気にしつつ小声で訊いた。 「えっと、その、鷺宮さん。こ、この建物はいったい……?」 「まあ、『鷺宮さん』だなんて、他人行儀な! 秋人様にだけは、隠しても隠しきれぬ親愛の情を込めて『籐子』とお呼びくださることを許可いたしますわ」 「いや、それは、その」  白い手袋をはめた手を「ぽっ」と赤らむ頰に添える籐子様に、なんと答えたらいいかわからず、俺はあらためて彼女の背後の建造物に目をやった。  ……なんだろう、これ。インドのタージマハル? 香港の九クー龍ロン城砦? 大阪万博の太陽の塔? 異星人の基地? 妖怪の棲処?  とにかく得体の知れない、ひたすら豪華でキラキラと輝くなにか。それがくっきりした夏の青空を背に、天高く屹立している。実にインパクトのある光景だった。うちの学校の関係者だけでなく、浜辺にいた家族連れやカップルまでが遠巻きに人垣を作