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作者:新八角,吟
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-10-07(ASCII Media Works)
价格:¥690 原版
文库:电击文库
丛书:血翼王亡命譚(3)
代购:lumagic.taobao.com
血翼王亡命譚III ―ガラドの夜明け― 「ただいま」  明るいイルナの声が飛んできて、俺は本から顔を上げた。 「おかえり。大分長かったな。外は真っ暗じゃないか」 「ほんとにね。まあ……そう簡単な話じゃなかったってことよ」  宿の扉を閉めて軽く伸びをした彼女は、するりとチャフムを取り外す。布から姿を現した亜麻色の二つの三角形、彼女の猫耳は気持ちよさそうにぱたぱたと震えた。チャフムを外したということはもう今日は外に出るつもりはない、ということだろう。実際、窓から覗く街は粘ついた夜闇に覆われており、とても出歩く気になどならない。  イルナと共に部屋へ帰ってきたスゥは俺の肩に飛び乗ると、机の方に頭を傾けた。 「……ずっと本読んでたの?」 「まあ、別にやることもないしな。俺は速く読めないから、かなり時間はかかってるけど」 「……『血翼王伝』?」 「血翼王が書いたっていう『血翼王亡命譚』の抄本というか、普通の読者でも楽しめるような面白い逸話だけを選んだ本らしい……だろ、イルナ」  俺にこの本を薦めてくれた張本人は机の向かいに腰を下ろすと、麻袋を置く。そしてその中から三つの林檎と、葡萄の葉でつつまれた四角い物体を取り出しながら、頷いた。 「そうよ。かなり潤色されてるって言われてるけどね。実際、古い写本と見比べたりすると、戦いだとか道中の恋物語だとか、現実離れした話がいっぱい入ってるわ」 「初心者の俺としては、これくらいが飽きずに読めていいんだけどな。写本はないのか?」 「こんな街の書物庫にはないわね。勿論、私は内容を覚えてるから話してもいいけど」  ……頼めば本当に一字一句間違えずに話しそうなのが、恐ろしいところだ。 「普通、バラン都市群みたいな古くて大きな書物保管所にいかないと自分の目では見られないの。それに、どの写本も一部が散逸していて、正確な全貌は摑めないままだし」  イルナは短刀を取り出し、林檎を切り分けながら小さな盆の上に載せる。特に小さく刻んだものは端に寄せ、スゥの分にした。俺の肩からぴょんと机に着地すると、スゥは「いただきまーす」と言って、早速林檎をつつき始める。イルナも一切れ齧ると、俺が読んでいた頁ページに目を落とし、素直に感心した様子を見せた。 「ユウファが自分から本を読みたい、なんて言い出した時はびっくりしたけど、ほんとに勉強してるみたいね」 「なんというか……因