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作者:三上延
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-10-06(ASCII Media Works)
价格:¥637 原版
文库:电击文库
丛书:ダーク·バイオレッツ(6)
代购:lumagic.taobao.com
ダーク·バイオレッツ6 常世長鳴鳥    1  十二月が始まったばかりの夜だった。月も星も見えない。夕方から降っていた小雨のせいで、アスファルトの路面はじっとりと濡れていた。  車を降りた途端に激しい波の音がした。新田晴海は思わず立ち止まる。一瞬、自分が海の中にいるような錯覚に陥って、慌てて周囲を見回した。彼女は神岡町の湾岸道路の真ん中に立っている。彼女は道路を渡って、音のする方へ近づいていった。真っ暗でよく見えなかったが、ガードレールの向こうにはコンクリートで護岸工事された斜面があり、海はその先にあるはずだった。 「雨、やんだね」  晴海の背中から男が話しかけてくる。 「霧雨じゃないの、これ」  晴海は白い息を吐きながら答える。レストランにいた時よりも雨足は確かに弱くなっていたが、立っているだけで体が濡れてしまいそうな気がする。冷たい空気がコートの中にまで染みこんでくるようだった。  晴海は駅前の商店街にあるパン屋の娘で、今は神岡町の西陵高校で学校司書として働いている。男の方は商店街にあるスポーツショップで働いている若い店員だった。出身は東京だということだが、この町にふらっと現れてそのまま居着いたらしい。店番をしながらテレビばかり見ているとか、無駄話ばかりしているとか、よくない評判はあったが、晴海はあまり気にしていなかった。地元の人間はよそ者をことさら悪く言う癖がある。  見た目は悪くなかったし、道で会うたびに話しかけてきて、しつこく誘うのでまあいいか、という気持ちで晴海は食事に出かけた。男の車でレストランに行き、三十分もしないうちに、晴海は地元の人間の噂話が正しいこともあると思い知った。  思ったよりもずっと男はよく喋った。しかし他人の話はろくに聞かない性格だった。そういう人間の多くがそうであるように、自分の話が面白いと思いこんでいるようだった。結果として「同じ懐中電灯が一度に三本も売れた話」など、まるで興味をそそられない話をいつまでも聞くはめになった。 (文ちゃんと食事した方がよっぽど楽しいだろうな)  よく動く男の口を見ながら晴海は考えていた。文ちゃん、というのは同じ商店街にあるオヌマ書店の店主の文彦で、晴海とは幼馴染みだった。至って無口な性格だが、人の話を引き出す才能のようなものがある。散歩のついでにオヌマ書店に行き、文彦と世間話をするのが彼女の習慣になっていた。 (