聖剣の姫と神盟騎士団 全6巻
【合本版】
聖剣の姫と神盟騎士団アルデバラン
全6巻
杉原智則
角川スニーカー文庫
目 次
聖剣の姫と神盟騎士団Ⅰ
聖剣の姫と神盟騎士団Ⅱ
聖剣の姫と神盟騎士団Ⅲ
聖剣の姫と神盟騎士団Ⅳ
聖剣の姫と神盟騎士団Ⅴ
聖剣の姫と神盟騎士団Ⅵ
聖剣の姫と神盟騎士団アルデバランⅠ
杉原智則
角川スニーカー文庫
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Contents
序章
一章 小悪党とお嬢さま
二章 賢者の塔
三章 完全攻略の秘訣
終章
あとがき
~盲いた吟遊詩人の詩~
疾風の伝説を聞かせよう。
聖剣団初代団長が髪なびかせながら小高い丘の上に立つとき、
そのまなざしになにを見つめているかを教えよう。
右の肩に飛び乗って、まるで道先案内人を気取るように首をのばしている
竜の子アイアネスが、その耳もとでなにを囁いているかを伝えよう。
ジョッキは置かなくて構わない、背筋をしゃんとのばす必要もない、
ご同輩、酔いどれながらでも横になりながらでもいいから、
しばしこのしわがれた声にゆったりとつきあってくれないか。
彼らがわれらに残してくれたものは、つまるところそうした時間に
ほかならないのだから。
序章
(ふてぶてしいガキだ)
と、その兵士が思ったのも無理はない。
薄暗い土牢のなか、少年はど真んなかに腰を落ちつけて座っている。肩よりやや長く垂れさがった髪を搔き、肩を搔き、背中を搔いて、それにも飽きるとぼんやり中空を見あげている。
これからの身の上を案じて、悲嘆に暮れているふうにも絶望しているふうにも見えない。かといって、すべてに諦めをつけて考えることをやめてしまった、というのもちがう。
表情に余裕がある。敗戦した直後、敵陣営に囚われてしまった身だというのに、今日も、明日も、そして当然明後日も、自分はなにひとつ変わることなくお天道さまを頭上に迎え、飯を喰って、日没とともに眠るのだ、という顔をしている。
「おい」
あまりに腹が立ったので、兵士は去り際にそんな声をかけた。
「いまに、お仲間がじゃんじゃん運び込まれてくるぞ。今夜は手足をのばして眠るというわけ