てのひらのエネミー 全4巻
【合本版】
てのひらのエネミー
全4巻
杉原智則
角川スニーカー文庫
目次
てのひらのエネミー 魔王城起動
てのひらのエネミー 魔将覚醒
てのひらのエネミー 魔軍胎動
てのひらのエネミー 魔王咆哮
てのひらのエネミー
魔王城起動
杉原智則
角川スニーカー文庫
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信したり、ホームページ上に転載したりすることを禁止します。また、
本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
目次
序章
第一章 肝試し
第二章 儀式
第三章 復活
第四章 教育係
第五章 しもべたち
第六章 疑惑
第七章 救出
第八章 過熱
第九章 衝突
第十章 戦闘
あとがき
長い、長い──それは果てしもない旅路のように思われた。
身体を押し包む黒い道筋はいつまでもつづき、このまま晴れることなどないのではないかと不安に駆られるほどだ。
世界を覆った暗黒時代そのものだ、とシーラ・アランスは唐突に思った。
それもまた、途方もなく長い、そして人々にとってはまさしく暗闇に覆われたにも等しい時代だったから。
かつて、地上はただひとりの男のものだった。
木も山も、海も、風も、水面に反射する光のひと粒も──生きとし生けるものの命さえもが。
彼の許しがなければ日の下を歩くことも許されず、彼の怒りを買えば息ひとつ吸うことすら禁じられた、そんな時代が確かにあったのだ──と、教会の司祭たちは語り継ぐ。
神への祈りの文句が、意識しないままに喉もと近くまでせり上がってきた。
唇から放たれる寸前、ようやくのことで黒い雲を突き抜ける。
かつて人が暗黒時代をくぐり抜けたその瞬間のように、ぱっと差しこんだ光がシーラの両目を射た。
が、ようやくのことで長い夜を終えた人々をその先で迎えていたのは──、
戦場だった。
夕暮れ時。
緋色に燃え立つ山々の上。獰猛な飛竜たちが羽根を羽ばたかせ、空中を縦横無尽に駆けている。
そう──かつては空もまた、ひとりの手の中にあったのだ。
が、いまは違う。空は神が我らに与えてくださったもの。この鋼鉄の翼で飛ぶことを許された我らのもの。
シーラ・アランスは操縦桿を前へと倒した。心臓エンジンが唸りをあげ、ぶ厚い風の層をえぐり抜きな