音使いは死と踊る 2
目次
序章
第一章 覚悟の相見
第二章 悪の懺悔
第三章 朋輩の交差
終章
イラスト/巖本英利
待ち合わせ場所はAnonymousアノニマスアジトの入り口でもある例のカフェ。俺はいつもより気合いの入った服装でそこへ向かっていた。
兄貴の死から数週間が経って、すっかり俺は元の日常を取り戻しつつある。
薄情……というのだろうか。もういつも通りに振る舞う俺を見て、もしかすると周りの人達はそう思うのかもしれない。
自分で思うのは、いつまでも引きずってはいられない、ということだ。兄貴の死は確かに辛い。だけど、俺は兄貴を自分の選択の下敷きにした。切り捨て、自分を選んだのだ。だから今更引き返すことなどできないし、悔やむことは許されない。Anonymousアノニマスで生きていくと決めたから。
学校生活は表面上、楽しんでいる。
人間関係は少し変化した。俺は組織的な都合でロールと二人でよく行動するようになり、恒例のメンバーであった俺、弦気、大橋、凛の四人でのグループは、俺が欠けがちになっている。
日曜日。今日も、前までなら弦気達と遊んで過ごす休日になるはずだったが、俺にはロールと隣町まで買い物に行く約束があった。
あまり付き合いが悪いのもいけないと思うが、俺とロールが付き合っているという認識があいつらにはあるから、平日も休日も遊びに誘われることは少なくなった。
それは兄の死から間もないのに、遊びに誘うのはどうなのか、という、あいつらなりの配慮かもしれないが。
そんなことを考えながらカフェに着くと、俺は組織専用の方の携帯にメールが入っていることに気づいた。
『ごめん。ちょっと私の部屋まで下りてきて。面倒な人が来た』
面倒な人が来た?
どういうことだろう。まさか月離さんが帰ってきたとかじゃないよな。
もしそうだったら本当に面倒だけど……。まあ行ってみたら分かるか。
俺は携帯をポケットに入れる。そしてロールの部屋に向けて地下へと下りて行った。
ロールの部屋に着くと、そこにはロール以外に一人の女の子がいた。
ロールの部屋は酷く散らかっており、何やら戦闘した形跡が見られる。
テーブルは倒れ、ベッドもひっくり返っていて、壁にはいくつか穴が空いている。
俺はおそらくロールとバトったのであろう見知らぬ女の子に視線を下