后退 返回首页
作者:三上延
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-10-06(ASCII Media Works)
价格:¥637 原版
文库:电击文库
丛书:ダーク·バイオレッツ(4)
代购:lumagic.taobao.com
ダーク·バイオレッツ4 死者の果実    「八月十八日」  最近、坂がちょっと長くなった気がする、と神野岬は思った。なんとなく前に進む足が重い。子供の頃から何度も上がっている坂で、伸びたり縮んだりするはずはないのだが。 (なんだろ)  彼女は空を見上げる。真夏には珍しい曇りの日で、午後になってから少し風も吹き始めていた──夕立が来るのかもしれなかった。  神野岬は高校二年生。この町の神岡北高校に通っている。切り揃えたばかりのショートカットといい、低い身長といい、スカートをはいていなければ性別を間違われることも多い。性格の方は裏表がない──と言えば聞こえはいいが、思ったことをためらいもなく口にする性格で、彼女の言葉に周囲がぎょっと振り返る場面もしばしばある。「かわいいけど男らしい」というのが友人たちの一致した意見だった。  彼女が向かっているのは従兄の神野明良の家だった。もともとは祖父の道蔵の家だったが、今は明良が一人で住んでいる。明良も岬と同い年で、同じ神岡北高校に通っている。岬の住んでいる家は歩いて五分とかからない場所にあり、退屈をもてあますとこの従兄の家を覗きに行くのが彼女の癖だった──が、ここのところ少しそれも遠のいていた。  八月の初め頃、従兄の様子がおかしくなった。神岡町全体に大量の蛾の幼虫が涌くという騒ぎがあった頃だ。具合が悪いというわけでもないが、家に閉じこもったまま誰とも連絡を取らなくなった。いくら問いつめても理由を話そうとしない。  ある日、岬が陸上部の練習から帰ってくると、仕事休みのはずの父親が出かけていた。明良の家へ行ったと聞いたが、その明良の家にも誰もいなかった。夕方になって父親は帰ってきたが、事情は話せないの一点張りだった。  夜も更けた頃、変わり果てた姿の明良が岬の家にやってきた。玄関に出ていった岬は言葉を失った。 「叔父さん、まだ起きてるか」  と、明良は言った。岬は驚いた。しかし、それは目の前の従兄が全身泥をかぶったように汚れていたせいでもなければ、腕にあった火傷のような傷のせいでもなかった。 「……どうしたの、その顔」  頰にはどう見ても涙を流した跡が残っていた──岬は昔から明良を知っているが、最後に泣いたのを見たのは小学生の頃だ。三年前に母親が死んだ時も、この従兄は涙一つ見せなかったのだ。 「……顔?」  明良は自分の顔を撫でた。岬は腫れ